研究課題/領域番号 |
26249142
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 仁 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (90183863)
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研究分担者 |
前川 孝 京都大学, エネルギー科学研究科, 名誉教授 (20127137)
打田 正樹 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (90322164)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2017-03-31
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キーワード | 球状トカマク / 電子サイクロトロン加熱・電流駆動 / 電子バーンスタイン波 / オーバーデンスプラズマ / 無誘導トカマク形成 |
研究実績の概要 |
(1) トロイダル磁場電源の増強を行い、コイル電流 3.4 kA で 100 ms のフラットトップの通電が可能となった。これにより、5GHz の電子サイクロトロン(EC)共鳴層を R <= 22.8cm まで設定する事ができ、第2高調波共鳴層位置は R <= 45.6 cm となり、リミター位置 R=47cm から見て、~1cm、真空容器壁(R=50cm)から見て ~4cmのところまで、押し出す事ができるようになった。 (2) トロイダル磁場強度を変えて、5GHz, <~200kW マイクロ波入射によるプラズマ電流立ち上げと球状トカマク形成実験を行った。EC 共鳴層の位置を R>~20cm とすると、プラズマ電流および入射電力の増大に伴い、電子密度が大きく増加し、オーバーデンス因子(電磁波のプラズマカットオフ密度に対する電子密度の比)~4 が得られた。 (3) AXUV検出器の前面に2つの異なる厚さの吸収体をおいてプラズマから放射される軟X線強度を比較することによって電子温度を推定した(X線吸収法)。電子密度が大きく増加する磁場配位では電子温度は ~ 100eV となり、顕著な電子加熱が起こっている事が示された。 (4) 磁場強度をほぼ半分にし、2.45GHz, ~60kW マイクロ波入射によるプラズマ電流立ち上げと球状トカマク形成実験を行って 5GHz マイクロ波を用いた場合と比較した。EC 共鳴層の位置でみると、密度増加が起こるのは共通して R ~ 20cm 付近に来た時であり、電子バーンスタイン(EB)波の励起が第1伝播帯で起きた時に、バルク電子温度の顕著な増加に伴って電子密度が増加したためと結論づけられる。 (5) 高電力入射 (Pinj > 100kW) 時に、下部 Mo 板にホットスポットの発生が発生し、ひどい時には、プラズマ電流と密度が下がり、プラズマが消失してしまうことも見られた。強いガスパフを行うと、電子密度は高くなって、ホットスポットは軽減される。しかし、密度が上昇した分、プラズマ電流は増加しなくなり ~10kA 程度にとどまった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
* トロイダル磁場電源の増強により、5GHz <~200kW の高電力入射において、第一伝播帯でのEB波の励起と、基本EC共鳴での加熱が初めて可能となった。得られたオーバーデンス因子 ~4 は 2.45GHz ~80kW 電力入射時の ~5 にはまだ及ばないが、電子密度の値ではこれまで得られたことの無い 1 x 10^18 m^-3 を越え、2.45GHz の場合の ~3倍の値が得られた。 * プラズマパラメータが上昇したので、AXUV検出器による軟X線放射分布計測、多チャンネル 70GHz ミリ波干渉計による電子密度分布計測、重イオンビームプローブによる空間電位分布計測の S/N が改善され、計測精度の向上が図られた。また、分割リミターにより、熱流の分布計測が可能となり、熱流を担うと考えられる高速電子の損失分布の情報が得られるようになった。 * ホットスポットを軽減する方法として、垂直磁場の強度分布(n インデックス)の制御や入射電力の時間制御、EC共鳴層位置の最適化などを行ったが、強いガスバフをして電子密度を上げると軽減されることがわかった。 * PI の検出に関しては、信号は得られておらず、検出方法のさらなる改善が必要であり、検出用プローブと検出回路の改善を行っている。 * 5GHz マイクロ波入射アンテナのローブを集束するための集束ミラーを検討しており、現在コールドテストを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
* 今年度、クライストロン電源のコンデンサーバンクを増強し、65kV, 10A, 100ms での運転が可能となった。今後、5GHz クライストロンのコンディショニングを行って、パルス幅をこれまでの 70ms から 100ms に伸ばして実験を行う。これにより、電流立ち上げ時間を伸ばす事ができるため、更なるプラズマパラメータの上昇と、放電時間の伸張による各種計測器の計測精度の向上が期待される。 * UHR 層での電力密度の増加をめざし、入射マイクロ波ローブの集束性の改善を図る。そのためのアンテナ系の設計とコールドテストを進める。 * PI の検出をするための検出用プローブと検出回路の改善を進める。また、入射電力を増加させた時のプラズマパラメータの変化を調べ、非線形作用の有無を調べる。 * 大半径方向分布計測では、特に UHR 層、プラズマカットオフ層付近での密度勾配長の計測をめざし、電子密度、プラズマ電流の増加との関連を調べる。 * 高速電子の損失にともなうX線の発光計測や熱流計測の多点化により、高電力入射時のエネルギー損失について調べる。
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