研究課題
今年度の研究においては主として単純酸化物 (sesquioxide) を中心に、そこから一部派生した化学組成に関しても検討を行った。単純酸化物に関しては、微小粉末を得るプロセスを見直したことにより、昨年度報告した一部材料において特性向上に成功した。今年度はこれまでも着手していた重元素系の材料に加え、基礎的な物性を調査する目的の下、MgO、SiO、CaO、Ga2O3 といった比較的軽い物質のシンチレーション特性に関する調査も行った。結果としてSiO、Ga2O3からは10000-20000 ph/MeV 程度の発光量、数ナノ秒の高速な蛍光減衰時定数を観測する事が出来た。そのため今後はこれらの重元素版を検討する。特に Ga2O3 は半導体であるため、バルク体が利用可能、室温で明瞭な光電吸収ピークが観測可能、さらに光電子増倍管の感度波長域で発光する半導体シンチレータは、世界初である。一方で MgO、CaO からはシンチレーション発光は乏しい反面、強い輝尽・熱蛍光と言ったドシメーター用の発光を観測した。これは近年、私が提唱しているシンチレータとドシメーターの相補性に基づく関係であり、放射線計測用の蛍光体 (シンチレータ、輝尽・熱・RPL) の設計指針にとって重要な知見である。また新たな切り口として、フッ化物透明セラミックスシンチレータの開発にも挑戦し、透明セラミック BaF2 シンチレータを得ることが出来た。これらの酸化物、フッ化物シンチレータに加え、ハライド系シンチレータに関しても検討を行った。世界中で開発競争が盛んである Eu 添加 SrI2 シンチレータを開発したところ、80000 ph/MeV の発光量、662 keV で約 3% のエネルギー分解能を達成した。幾つかのシンチレータを開発したところ、結果として Cs2HfCl6 という新規シンチレータを発見した。当該シンチレータは30000 ph/MeV 程度の高発光量、高速な発光が観測されており、今後研究を進めることで更なる特性向上が可能と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、様々な新規シンチレータを開発し、発光量は 70000 ph/MeV 以上、蛍光減衰時定数は 100 ns 以内、662 keV におけるエネルギー分解能 3% を得る事である。前二点に関しては初年度に達成しており、今期も予定通りに単純酸化物系シンチレータの系統的な探索を行う事ができた。
初年度はガーネット、次年度はセスキオキサイドと計画通りに研究を進めており、来期も申請当初の計画に従い、複合ペロブスカイトの検討を行う。さらに今期に得られたシンチレータとドシメーター的特性の相補性も新たに材料設計指針に組み込むことで、特性の良いシンチレータの開発を目指す。
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