研究課題/領域番号 |
26249150
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
和田山 智正 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (20184004)
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研究分担者 |
田邉 匡生 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10333840)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 触媒・化学プロセス / ナノ材料 / 表面・界面物性 / 燃料電池 / エネルギーキャリア / 二酸化炭素電解還元 |
研究実績の概要 |
本研究は、エネルギーキャリア分子などの電極表面における反応特性と実触媒表面の原子配列・構造との関係を原子・分子レベルで検討するための要素技術開発、並びに脱水素反応や直接エタノール型燃料電池の電極反応、さらに二酸化炭素の電気化学還元に有効な触媒のラボレベル開発を目指す。具体的には、分子線エピタキシ(MBE)法によりNi、Pd、Pt、Auの基本低指数単結晶基板(M(hkl))に第2元素Xを添加して作製したX/M(hkl)やX(hkl)基板上のM単原子表面層を構築し、いかなる最表面構造が最も活性化エネルギー(過電圧)を低減するかを精査する。さらに、表面構造解析や分子挙動の解析結果に基づき過電圧の低い触媒を得る上で最適な合金最表面原子配列・組成を提示する。その上で、得られる最適表面構造をターゲットとし、合金ナノ微粒子をアークプラズマ堆積法により超高真空中においてドライプロセス合成し、得られるナノ粒子が発現する触媒特性を精査してその有用性を実証することを目的としている。 昨年度は、一昨年度開発した電極表面反応生成物のリアルタイム解析のためのオンライン質量分析(OLEMS)システムを用いて、PtやAuなどの単結晶電極反応生成物のその場分析を行った。具体的には直接エタノール型燃料電池の電極反応として重要な1)エタノールの酸化反応や2)二酸化炭素の電解還元反応に対してOLEMS法を適用した。また、エネルギーキャリア分子であるメチルシクロヘキサン(MCH)の熱的脱水素挙動を解析するための測定系を構築し、3)合金表面構造とMCH脱水素特性との関係を検討した。さらに、4)アンモニアボランの電気化学的脱水素挙動とAuの表面原子配列との関係について評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)エタノールの酸化反応:Pt(hkl)およびSn/Pt(hkl)系について、Ptの表面原子配列や表面Sn原子の存在状態をX線光電子分光などで検討した上で、エタノール酸化反応活性の序列との関係を議論した。その結果、PtおよびSn/Ptともに110ステップが高活性かに寄与していることを明らかにした。 2)二酸化炭素の電解還元反応:Au単結晶電極の表面原子配列と二酸化炭素の電解還元の関係をOLEMS法により検討し、(110)面が最も還元能に優れることを見出した。 3)合金表面構造とMCH脱水素特性:PtおよびPt-Co合金表面におけるMCHの熱的脱水素特性を検討した。Pt(hkl)基板におけるMCH脱水素特性は(100)面が最も高いことがわかった。さらにPt-Co合金系においても同様の検討を行い、Pt/Co組成比により脱水素特性が変化し、Pt-Co合金組成比が1:1の場合に最も高活性であることを明らかにした。 4)アンモニアボランの電気化学的脱水素挙動:AuおよびPt単結晶基板上におけるアンモニアボランの電気化学的脱水素挙動を新規に開発した質量分析計を中心とする測定系を用いて測定し、Au、Ptともに最稠密面である(111)面の活性が高いとの結論が得られた。 以上から、単結晶金属・合金系の反応性と電極表面構造との関係についての知見が蓄積されて来ており、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに、1)直接エタノール型燃料電池において重要なエタノール、さらに燃料合成の観点から注目されている2)二酸化炭素の電気化学還元に関する反応機構に関する考察結果、また3)エネルギーキャリア分子としてのMCHの熱的脱水素挙動の検討に加え、4)アンモニアボランの電気化学的脱水素に関する知見など、主として金属および合金単結晶電極表面の構造(原子配列)とそれぞれの反応系における活性との関係を議論することを通じて、反応性を向上させるための触媒金属・合金最表面の原子配列や表面合金組成に関する結果が得られた。本年度(最終年度)は、それぞれの触媒反応系に対する基礎的知見を踏まえて、アークプラズマ堆積などの金属蒸着法を中心としたドライプロセスにより、PtやAuなどの金属やその合金ナノ粒子を合成し、その構造を透過電顕やX線回折法などにより検討した上で、単結晶電極系で採用している電気化学的、熱的活性評価法を応用して実験を行い、得られる触媒特性を精査して、ドライプロセス合成した合金ナノ粒子がラボレベル触媒として有用であることを示したい。
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