研究課題
神経細胞はシナプス入力を発火出力へと変換する回路素子である。入力情報の大半は樹状突起で受け取られ、細胞体へと伝えられる。この過程は非線形である。すなわち、シナプス入力は、そのまま単純加算的に細胞体の脱分極を引き起こすわけではなく、複雑な形をした樹状突起のどこで、いつ、どのように生じるかによって細胞体に及ぼす影響が異なる。したがって、神経回路の動作原理を解明するには、i)人工的な刺激で誘導したシナプス活動でなく、自然に生じる入力パターンで実験する必要がある、ii)多数のシナプスから同時に記録する必要がある。今年度は複数のスパイン(シナプス後部構造)のカルシウム動態を通じてシナプス入力を可視化し、自然なシナプス活動のin situパターンを記録した。とくに今年に入り、400個近いのスパインから、しかも100 Hzという高速での同時撮影が可能にした。この大規模イメージングと細胞体での古典的な電気生理学的記録を組み合わせることで、シナプス活動が必ずしも細胞体に伝わらないことを発見し、そのメカニズムにGABAが関与していることを見いだした。
2: おおむね順調に進展している
計画1.樹状突起イメージングについては想定以上の進展を見せ、おそらくH27年度中には論文として投稿できると思われる。計画2.軸索については、とくに遠位からのCa Imagingが困難であることがわかった。計画3.in vivo実験については、DATマウスやHAマウスの導入と繁殖を順調に進め、ドパミンおよびヒスタミン系の神経線維の可視化、および光遺伝学的な制御を開始できる見通しが立った。
計画1と計画3には申請書に記載した内容から変更なく推進できる。計画2については、想定外の困難があったため、これに対処するために、電位感受性タンパクを導入した。現在ウイルスを作成しているところであり、H27には実験を再開できる見通しである。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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