研究課題
大脳基底核から視床―大脳皮質への情報伝達様式を調べるため、以下の実験を行った。抑制性の光感受性チャンネルであるハロロドプシンを搭載したAAVベクターをサルの大脳基底核の出力部である淡蒼球内節に注入した。ハロロドプシンの発現を待って、光ファイバーを金属電極に貼り付け光刺激と記録ができるオプトロードを淡蒼球内節に刺入し、神経活動を記録した。光ファイバーを介して黄色レーザーを照射すると、淡蒼球内節ニューロンの活動が抑制されることがわかった。これらの結果は、ハロロドプシンが淡蒼球内節ニューロンに発現し、実際に機能することを示している。次に、オプトロードを視床に刺入した。予め大脳皮質運動野と淡蒼球内節に刺激電極を埋めておき、大脳皮質刺激によって逆行性に応答し、淡蒼球内節刺激によって抑制される視床ニューロンから記録を行った。光刺激によって視床ニューロンに活動変化はみられなかったが、淡蒼球内節刺激によって誘発される抑制を消去することができた。これらのことは、神経終末でもハロロドプシンが発現しており光刺激によって抑制性伝達物質であるγアミノ酪酸の放出が抑えられること、しかし、それによって視床―大脳皮質投射ニューロンが興奮しないこと、すなわち広く認められている説とは異なり、視床ニューロンは脱抑制によって作動しない可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
従来の神経化学的方法に加え、光遺伝学的方法によっても淡蒼球内節―視床投射をブロックできることがわかった。この方法により、時間的に正確に、しかも繰り返し実験することが可能になり、今後の研究の進展が期待できる。
淡蒼球内節の電気刺激による抑制性の情報伝達が、神経終末における光照射でブロックできることがわかったので、次に実際の運動に関連した神経活動もブロックされるのかを調べ、大脳基底核の出力が視床―大脳皮質系をどのようにコントロールしているのか検索する。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 8件、 招待講演 10件) 備考 (3件)
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