研究課題/領域番号 |
26250011
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 啓治 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (00221391)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 前頭前野 / 目的指向的行動 / 認知制御 / 投射特異的機能ブロック / 領野間相互佐用 |
研究実績の概要 |
1)前頭極の機能 前頭極は遂行中の課題からトップダウン注意を他の事柄にそらず役割を果たすとの仮説を立て、この仮説の更なる検証のために遂行中の課題と関係ない刺激へ注意を払い探索する能力を比較する実験の計画を立てた。しかし、類似の実験デザインでの研究が英国オックスフォ―ド大学のMark Buckleyのグループにより行われ、我々の仮説とほぼ一致する結果が得られたとの情報を得たので、このサブ課題は中止し他のサブ課題に集中することにした。 2)前頭前野の異なる領野間の相互作用 層を同定して局所電場電位を記録するために一本のワイヤの上に多点(10個以上)の記録部位を持つ多点電極での記録を課題遂行中のサルから行う技術を確立した。また、WCST課題遂行中のサルの行動指標を記録して解析を行い、サルがサンプル刺激から反応の方向を決定するように課題を変更した。前頭前野背外側部と前帯状溝からの同時記録を開始した。 3)投射特異的機能ブロック法の開発 コレラ毒Bサブユニット(CTB)にテトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)を融合させたタンパク質(CTB-rtTA)の遺伝子を組み込んだアデノ随伴性ウィルスベクターを投射先に注入し、テトラサイクリン応答因子(TRE)とシナプス伝達の阻害タンパク質であるテトロドトキシン(TeTX)を組み込んだアデノ随伴性ウィルスベクターを投射元に注入する方法を開発した。サルの前頭前野から下側頭葉皮質への投射で試したところ、2重感染してTeTXを発現する神経細胞を前頭前野に多数認めた。しかし、ドキシサイクリンなしのリークコントロールでもTeTXを発現する細胞が数は少ないものの観察され、リークを示した。そこで、リークの抑制システムを組み込む準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブ課題「前頭前野の異なる領野間の相互作用」において、いくつかの技術的問題を解決し、本番の記録を開始することができた。また、サブ課題「投射特異的機能ブロック法の開発」において、コレラ毒Bサブユニット(CTB)にテトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)を融合させたタンパク質(CTB-rtTA)の遺伝子を組み込んだウィルスベクターを投射先に注入して、CTBの逆行性軸索内輸送能力を使ってrtTAを投射元に運ぶという独創的方法を考案し、極めて多くの神経細胞を2重感染させることができた。リークを抑える改良が必要であるが、2重感染の効率化に比べれば技術的困難は低いと思われる。技術開発の山を越えた。
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今後の研究の推進方策 |
前頭極は遂行中の課題からトップダウン注意を他の事柄にそらず役割を果たすとの仮説を立て、この仮説の更なる検証のために遂行中の課題と関係ない刺激へ注意を払い探索する能力を比較する実験の計画を立てた。しかし、類似の実験デザインでの研究が英国オックスフォ―ド大学のMark Buckleyのグループにより行われ、我々の仮説とほぼ一致する結果が得られたとの情報を得たので、前頭極の機能を破壊行動実験で調べるサブ課題は中止し他のサブ課題に集中することにした。投射特異的機能ブロック法の開発に成功したら、この方法を用いて前頭極と前頭前野の他の領野との相互作用を調べ、前頭極機能の更なる解明を進めたい。
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