研究課題/領域番号 |
26250013
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
関 和彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所モデル動物開発研究部, 部長 (00226630)
|
研究分担者 |
太田 淳 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (80304161)
|
研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2018-03-31
|
キーワード | 筋シナジー / 脊髄 / サル / ミラーニューロン / 感覚フィードバック |
研究実績の概要 |
本研究では、随意運動制御の際の感覚運動統合において、上位中枢と脊髄の連関が持つ役割について明らかにする事が目的であった。具体的には3項目に分けて研究を実施した。第一の課題は、脊髄介在ニューロンと運動ニューロンとの関係性において表現されている筋協調パタンを、異なる脊髄下降路がそれぞれどのように利用して随意筋活動を生成しているのかについて明らかにする事であった。この点について、本年度は前年度獲得した赤核脊髄路の筋シナジー表現に関連するデータについて多変量解析を行い、赤核ニューロンの投射パタンは筋シナジーを表現している一方、それらの活動の時間的変動は筋シナジーの時間表現と必ずしも相関していない事が明らかになった。これらの知見の再現性を確かめるため、現在2頭目の課題訓練を行なっている。第二に、高次運動中枢からの脊髄投射の役割を知るため、脊髄における把握運動ニューロンやミラーニューロン様活動の意義を明らかにする事を目的にした。本年度はサルの行動訓練を継続して行ない、筋電図記録は完了した。第三に、随意運動の制御における中枢神経系への末梢感覚フィードバックの役割の一部を、光遺伝学による一次求心神経活動の選択的遮断などによって明らかにし、フードバックの制御がシナプス前抑制によって行われている事を証明する事であった。今年度は光遺伝学の実験系を霊長類に展開させた。また、シナプス前抑制の機能評価のための行動訓練を2頭のサルを対象に継続している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究項目1】本年度は赤核脊髄路細胞の表現する筋シナジーを明らかにする解析を行なった。具体的には1頭のサルにおいて手指筋から体幹筋まで広い範囲の筋が使われる行動課題を訓練し、その際の赤核ニューロン活動を記録し、その際、筋電図のspike-triggered averagingによって同定された運動ニューロンに投射のあるpremotor ニューロンの活動と、それらと同時に記録された筋電図活動を用いて抽出した筋シナジーパタンを統計的に比較した。その結果、赤核ニューロンの投射パタンは筋シナジーを表現している一方、それらの活動の時間的変動は筋シナジーの時間表現と必ずしも相関していない事が明らかになった。この結果は、我々がこれまで脊髄のpremotorニューロンで報告した結果と大きく異なることから、中枢神経系の多領域に存在するpremotor neuronの筋シナジー形成戸の貢献は一様でない事が示唆された。 【研究項目2】当年度はサル頚髄ニューロンにおけるミラー活動を記録するための実験装置を用いた行動訓練を開始した。2頭のサルに訓練を継続し、1頭のサルについては、筋電図記録を完了し、当該タスクに関する筋シナジー抽出を終了した。また2頭目のサルについてもほとんど記録可能な状態まで行動訓練が終了している。 【研究項目3】 前年度にスタートしたサルの訓練を継続しており、近日中に、記録に必要な外科的手術を行なう予定である。一方、ラットを対象に、光遺伝学の実験系を確立した。具体的には、座骨神経への光刺激によって、脊髄における誘発電位が記録する事ができた。またその誘発電位は光強度や照射時間によって制御する事が可能であった。また当該技術を霊長類に応用するため、新たなウィルスベクターの開発に着手した。さらにそれらのための電極開発にも着手した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究項目1については、2頭目の実験を完了し、これまで確立した知見の検証を行なうと同時に、運動の位相ごとの詳細解析や、フィールド電位の解析など、より解析を進める事によって新たな知見を獲得する必要がある。研究項目2については、行動訓練を完了し、脊髄でのミラーニューロン活動の同定を目指す。研究項目3については、齧歯類に関するデータ数を増やして論文化すると同時に、霊長類を対象とした末梢神経への光遺伝学手法の確立を目指す。
|