研究実績の概要 |
【研究項目1】本年度は、筋協調パタンの脳内表現としての筋シナジーを皮質及び赤核脊髄路がどのように協調して表現しているのかを主に新規解析によって明らかにした。皮質細胞はより遠位筋の限定された数の筋のシナジーを、一方赤核はより近位で、また複数関節をまたぐような筋シナジーを表現していた。一方、各領域で表現されている筋シナジーの時空間パタンと実際の筋活動の相関は高い場合と低い場合があった。この事は、個々の領域や細胞の筋活動生成に対する貢献が一様でない事を意味していた。現在2頭目のサルにおける記録を継続中である。【研究項目2】本年度は、脊髄上行路の皮質中継地点である, ブロードマンの3a野及び3b野に注目して実験を進めた。3a野には有意なミラーニューロン様活動が認められた一方、3b野にはそのようなニューロン活動は記録されなかった。3a野は筋固有感覚を選択的に中継する領域であることから、皮質で認められるミラー活動は自己と他者の筋骨格運動そのものを反映している可能性がある。【研究項目3】本年度は、2頭目のサルからのデータ収集に従事し、運動中にシナプス前抑制が低下する事を、興奮性試験を用いて再現した。従来知られていた皮膚反射入力へのシナプス前抑制とは逆のパタンであった。この結果は、運動中のシナプス前抑制が、感覚種及び運動内容に依存して選択的に行われていることを示していた。また、末梢求心神経にウィルスベクターを用いて光活動制御遺伝子を導入し、電気刺激ではなく光刺激で末梢神経活動に介入する実験については、基本的な実験が終了した。この方法によって、電気刺激と遜色ない神経モジュレーション効果が光刺激を用いて得られることが明らかになった。現在論文執筆中である。
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