研究課題
(1)肥満により腸内細菌叢が変化する分子機構の解明昨年までに我々は肥満に伴い肝がんの発症率が増加する原因の一つとして、二次胆汁酸を産生する腸内細菌が異常増殖することをマウスを用いた実験から明らかにしていた。今回、我々は肥満に伴い何故腸管に二次胆汁酸を産生菌が増加するのかを明らかにすべく、肥満に伴い増加す二次胆汁酸産生菌の単離を試みた。残念ながら目的とする菌(肥満に伴い増加す二次胆汁酸産生菌)は難培養性菌であるため、未だ単離培養には至っていないが、ようやく目的とする菌をin vitroで濃縮できる培養条件を見出すことに成功した。今後はこの培養条件を用いて単離培養を試みる予定である。(2)二次胆汁酸によるSASP誘導機構の解明培養肝星細胞を用いた実験により二次胆汁酸により活性酸素種(ROS)の産生が亢進し、DNA損応答が起こることがSASPの誘導に必要であることを見出した。更に、Toll様受容体を介したシグナルもSASPの誘導に重要であることを見出した。今後、DNA損傷応答とToll様受容体シグナルがどのように相互作用してSASPを誘導するのかを明らかにして行く予定である。(3)SASPによる発癌促進機構SASPによる発癌促進機構の詳細を明らかにするには肝臓のオルガノイド培養が必要である。我々はSASP同様、肥満に伴う肝癌の発症に必要なras遺伝子の変異を導入する方法を検討した結果、生後5日目にDMBAを処理したマウスから8週間後に肝臓のオルガノイド培養することでras遺伝子に変異を持った肝臓のオルガノイドを培養することに成功した。今後はこのオルガノイドに様々なSASP因子を投与することで起こる変化を指標にSASPによる発癌促進機構の解明を目指す。
3: やや遅れている
目的とする菌が難培養性菌であるため。しかし、当初目的としたステージには至っていないが、その前段階までは来ており、次年度の進展が期待される。
(1)「肥満により腸内細菌叢が変化する分子機構の解明」に関しては、今回我々が見出した培養方法を用いて単離培養を試みると同時に、目的の菌が全体の50%以上を占めるようになった段階でメタゲノムを行い、ゲノム配列の解読を目指す。(2)「二次胆汁酸によるSASP誘導機構の解明」に関しては、次世代シークエンサーやプロてオーム解析を駆使することで二次胆汁酸が引き起こす細胞内シグナル変化の全容解明を目指す。(3)「SASPによる発癌促進機構」に関しては、確立したras遺伝子に変異を持つ肝臓のオルガノイド培養系にRNAiライブラリーやケミカルライブラリーを用いた解析を組み合わせることでSASPによる肝発癌誘導機構の解明を目指す。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 12件)
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