研究実績の概要 |
1.融合遺伝子導入モデルの確立:胞巣状軟部肉腫と類円形細胞肉腫について詳細な検討を行った。胞巣状軟部肉腫モデルは、ヒト肉腫の形態像を良く反映し、高度な血管新生能と転移能を示した。ASPL-TFE3の発現によりGpnmb, Ctsk, Angptl2, Mdk等の発現が増加し、肉腫細胞による血管周皮/内皮の誘導がこれらの分子を介して行われている可能性が考えられた。CIC-DUX4を発現する類円形細胞肉腫は、早い発症速度や短紡錘形の形態像など、Ewing肉腫とは異なる性質を有していた。PEA3ファミリー等のCIC-DUX4標的遺伝子や、Cyclin D1を初めとする細胞回転促進因子の発現が亢進し、活発な増殖能を反映していた。新たな系としてEWS-NR4A3による粘液状軟骨肉腫とNAB2-STAT6による孤立性線維性腫瘍モデルを作製した。 2.滑膜肉腫発生母地の探索:マウス胎児の体幹・四肢・脊椎からそれぞれ間葉系細胞を分離し、SYT-SSX1を導入して腫瘍発生頻度と潜伏期間を検討中である。最も高頻度で早く腫瘍が発生した部位の細胞を、表面マーカーを用いてさらに純化し、起源を明らかにする。 3.滑膜肉腫の発症と悪性化の分子基盤:滑膜肉腫モデルにおいて、miR-214がSYT-SSX1と協調して滑膜肉腫の発症を促進した。miR-214の標的遺伝子候補としてEzh1, Fbxo3, Nomo1, Pten, Timp2等を同定した。 4. 新規分子標的治療薬の検討:Ewing肉腫モデルにおいて、EWS-FLI1の融合部特異的アンチセンスRNAとキトサン化合物とをカップルさせて投与した。ルシフェラーゼを発現するEwing肉腫細胞を皮下移植または尾静脈注射でマウスに生着させた後、皮下腫瘤または肺転移巣の大きさを指標として治療効果を検討した。増殖抑制効果は顕著でなく、DDSの改善を検討する。
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