研究課題/領域番号 |
26250038
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90201326)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / CRISPR/Cas9 / PBAT |
研究実績の概要 |
ランダムプライミングによらないPBAT2.0の開発:ssDNAの3'末端にTdTを用いて3'-azido-dGTPを付加した後で、クリックケミストリーを用いて5'-エチニル化オリゴヌクレオチドと連結する方法を考案し、各要素反応の実証に成功した。更にこの反応で生じたトリアゾール連結をDNAポリメラーゼによって乗り越えることで相補鎖を合成できることも確認した。これによりTdT-Assisted Chemical ssDNA ligationという新しい方法の原理証明に成功した。
部位特異的エピ変異導入:野生株において14コピーのタンデムリピートを成すCUP1遺伝子座位を標的として検討を行った。CUP1遺伝子に対する様々なsgRNAを設計してdCas9-Venusと共発現させたところ、核内の一点に蛍光シグナルの集積を認めた。銅の添加によってCUP1遺伝子プロモータにリクルートされる転写因子CUP2にRFPを融合したCUP2-RFPとdCas9-Venusを共発現する株を作成して銅を添加したところ、核内のVenusの輝点にRFPが集積することが観察されて、dCas9-Venusが正しく標的遺伝子CUP1座位を視覚化できていたことが確認できた。そこで、dCas9にヒストンアセチル化酵素p300のコア部分を付加したdCas9-p300を、視覚実験で有効性が確認されたsgRNAとともに発現するcup2欠損株を作成した。cup2欠損株はCUP1遺伝子の誘導が起こらないので銅感受性を示すが、dCas9-p300を遺伝子体部ではなくプロモータにリクルートすると銅感受性が部分的に抑圧された。この結果は、プロモータのヒストンアセチル化亢進によってCUP1遺伝子の基底発現レベルが上昇したものと考えられた。
エピジェネティック修飾の部位特異的生細胞可視化:dCas9によるCUP1遺伝子座位の可視化に成功したので、その周辺のエピジェネティック修飾変化の生細胞可視化を計画した。そのために、輝度と光安定性の双方に優れるNeonGreenについて、Net1とSir2の相互作用をモデルに、二分子蛍光相補に最適な切断点を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PBAT2.0の開発については、新しい方法が確立されつつあり、またその変法においても有効な結果が得られている。 部位特異的エピ変異導入については、初年度の遅れを取り戻して成功を納めることができた。 エピジェネティック修飾の生細胞可視化についても準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
PBAT2.0の開発については、TACSライゲーションによるものおよびその変法に関して、次年度内に完成の見込みが立った。 部位特異的エピ変異導入については、sgRNAのデザイン変更と複数同時使用によってその効率の向上を図る予定であり、他のエピ変異導入にも対象を拡げてゆく予定である。 エピジェネティック修飾の生細胞可視化については、二分子蛍光相補の系の立ち上げを急ぐ。
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