研究課題/領域番号 |
26250039
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
眞貝 洋一 国立研究開発法人理化学研究所, 眞貝細胞記憶研究室, 主任研究員 (20211972)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 転写抑制 / エピジェネティクス / H3K9メチル化 / CRISPR/Cas9 / 遺伝子ノックアウト / クロマチン |
研究実績の概要 |
ヒストンH3 の9番目のリジン残基のジあるいはトリメチル化(H3K9me2,3)は、種を超えて保存された転写抑制のエピジェネティックマークとして存在している。しかし、どのようにしてこのエピゲノム情報が転写を抑制するのか、その機構はまだよく理解されていない。そこで本研究課題では、これまで申請者が精力的に研究を進めてきた2つのH3K9 メチル化酵素G9a/GLP、ESETにより誘導されるH3K9me2,3をモデルとし、H3K9メチル化による転写抑制の分子機構の実体の解明を試みることを計画した。H27年度は、以下の研究を行った。 1.ESETにより抑制されるレトロウイルスの転写抑制に関与する遺伝子の網羅的スクリーニング H26年度、マウスES細胞でのCas9/gRNAによるノックアウトスクリーニングを可能にするため、humanized Cas9を恒常的に発現するES細胞を樹立、これにGFPレポーター遺伝子を組み込んだレトロウイルスを感染させ、しばらく培養後、GFP陰性の細胞からEsetをノックダウンあるいはノックアウトするとGFPの発現が誘導される細胞株を樹立した。H27年度は、この細胞を使いて、GFPの発現を指標に、gRNAライブラリーを発現するレンチウイルスを用いて、レポーター遺伝子の発現抑制に関与する遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、gRNAによるノックアウトスクリーニングにより、これまでレトロウイルスの転写抑制に関わることが知られていた複数の遺伝子だけでなく機能未知な遺伝子を多数同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H3K9メチル化による転写抑制の分子機構の実体を明らかにするために、初年度はスクリーニング系を立ち上げ、2年目は主にgRNAを用いたCRISPR-Cas9の系による網羅的ノックアウトスクリーニングを行い、3年目で新規に同定された遺伝子の機能を明らかにする、ことを計画した。研究実績の概要で述べたように、H26年度(初年度)はESETの下流で転写が抑制されているレトロウイルスをレポーターとして組み込んだ細胞を樹立し、H27年度(2年目)はこの細胞を用いCRISPR-Cas9の系による網羅的ノックアウトスクリーニングを行い、すでにレトロウイルスの転写抑制に関わることが知られていた複数の遺伝子だけでなく、機能未知な遺伝子も多数同定した。よって、今のところ研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、以下のことを行う 1.上述したように、これまで、ESETの下流で転写抑制を受けることが分かっているレトロウイルスのプロモーターの下流にGFPを組み込んだレポーターを導入したES細胞を用いて、gRNAによるノックアウトスクリーニングを行い、その結果、これまでレトロウイルスの転写抑制に関わることが知られていた複数の遺伝子を同定した。同時に、機能未知な遺伝子も多数同定した。そこで、最終年度のH28年度は、まず、スクリーニングにより同定された機能未知の上位24種類の遺伝子をCas9/gRNAによってノックアウトし、RNA-seq解析を行って、これらの遺伝子によってどのような遺伝子の転写が抑制されているか、特に内在性レトロウイルスのどのようなものがノックアウトにより脱抑制されるのか、を明らかにする。 2.上記の実験と並行して、同定された上位遺伝子のいくつかの遺伝子に注目し、その機能解析を進める。具体的には、遺伝子がコードしているタンパク質の核内やクロマチン上での局在、複合体として存在しているタンパク質の場合は複合体内の他の因子との機能相関を解析する。さらにエピゲノムとの相関、特にエピゲノムを読み取るような機能ドメインを持つ分子の場合は、その役割の解析などを進め、これらの解析を通して、いかにこれらの因子がH3K9メチル化の下流あるいは上流で転写抑制に働いているのか、を明らかにする。 3.上述した研究成果を今年度中に論文としてまとめ、公表する。
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