研究実績の概要 |
目的:ヒストンH3の9番目のリジンのジ、トリメチル化(H3K9me2,3)は、種を超えて保存された転写抑制のエピジェネティックマークとして存在している。しかし、どのようにしてこのエピゲノム情報が転写を抑制するのか、その機構はまだよく理解されていない。そこで本研究では、H3K9メチル化による転写抑制の分子機構の実体の解明を試みた。 研究計画:ヒストンH3K9メチル化酵素SETDB1/ESETは、内在性レトロウイルス及び外来性のレトロウイルスの転写抑制に寄与しており、Setdb1をノックアウトしたES細胞ではこれらのレトロエレメントの脱抑制が誘導される(Matui et al Nature 2010)。そこで、マウスES細胞でSETDB1により転写が抑制される外来性レトロウイルスの5’LTRの下流にGFP遺伝子を組み込んだレポーターウイルスをES細胞に感染させ、その後GFPの発現が抑制された細胞をレポーター細胞として使い、Cas9-CRISPRによる遺伝子ノックアウトスクリーニングを行って、レトロウイルスの転写抑制に寄与するエピジェネティック因子の網羅的探索を行い、新規因子が同定をめざす。そして、同定された新規因子がどのようにしてレポーターウイルスの転写を抑制するのか、又どのような内在性レトロエレメントの転写抑制に寄与するのか、解析を進める。 研究成果:スクリーニングした結果、SETDB1を筆頭としてこれまでレトロウイルスや内在性のレトロエレメントの転写抑制に寄与することが分かっていた因子が軒並み同定され、さらにいくつもの新規の因子の同定にも成功した(Fukuda et al. Genome Res. 2018)。新規に同定した因子の中では、SETDB1の上位で機能する分子と下流あるいは並行して機能する分子があることが見えてきた。
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