研究実績の概要 |
昨年度までに、染色体構築における2つのコンデンシンの差次的貢献を検定するための新しいin situアッセイ系を確立した。このアッセイでは、分裂期染色体をMgキレート剤を含む低張バッファーで一度おおきく膨潤させた(脱組織化)後、これを適切な塩濃度のバッファーにさらすことにより元の形態に戻す(再組織化)ことができる。siRNAを用いた除去実験から、この再組織化反応にはコンデンシンIIが大きく貢献していること、コンデンシンIとトポイソメラーゼIIの貢献は小さいことが分かった。機械学習プログラムを利用した画像解析は、この結論を強く支持した。こうした解析は、コンデンシンサブユニットが有する特徴的な物理化学的性質が、どのように分裂期染色体の構築に貢献しているかという問題に対して大きな示唆を与えるものである。本年度は、この成果をまとめた論文を発表することができた(Ono et al., 2017, Mol Biol Cell 28:2875-2886)。 Ki-67は、間期では核小体に局在するが、分裂期では染色体の辺縁部に局在する巨大なタンパク質である。分裂期におけるKi-67の機能を理解する目的で、AID (auxin-induced degron) システムを利用してKi-67(およびコンデンシン)を条件的かつ短時間で分解することのできる細胞株を確立した。これを利用することにより、Ki-67はコンデンシンとは異なるメカニズムを通して染色体構築に貢献していることを見出した(Takagi et al., 2018, J Cell Sci, doi:10.1242/jcs212092;理研・今本研究室(高木昌俊研究員)との共同研究)。
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