Rif1は、進化的に保存されており、酵母とヒトにおいて複製タイミングの制御に必須な役割を果たす。精製された分裂酵母Rif1はグアニン4重鎖(G4)構造に特異的に結合する。Rif1は、C端領域に依存してG4に特異的に結合するとともに、多量体を形成する。また同時に複数のDNAに結合しクロマチンループ構造を形成する可能性がある。 2500アミノ酸近いマウス全長Rif1を動物細胞で発現し、精製することができた。その生化学的解析から、これも、G4に特異的に結合することを示した。N端Heat repeatおよびC端ドメインの両者が独立にG4に結合するが、両者が存在する全長タンパクに比較して親和性は大きく減少する。また、N端およびC端ドメインいずれも多量体形成能を有する。これらの知見に基づき、Rif1が複雑に多量体を形成し、核膜近傍に、複製タイミングを制御するクロマチン高次構造を形成するモデルを提案した。 細胞内において、Rif1のC端領域は、染色体への強い結合に必要であるとともに、Rif1のDNA損傷に応答した核内foci形成にも必要である。 Rif1は転写制御にも関与し、ES細胞でRif1をノックダウンすると、Zscan4遺伝子領域など一群の遺伝子の転写が脱制御される。Rif1による転写抑制には比較的短い制御領域(2.6kb)で十分であり、エピゲノム制御の関与が明らかになりつつある。Rif1は二重鎖DNA切断に応答する非相同末端結合修復に関与することが明らかになっており、G4結合とクロマチン制御が二重鎖DNA切断応答にも関与するかどうかは今後の課題である。
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