研究課題/領域番号 |
26251008
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研究機関 | 公益財団法人国際高等研究所 |
研究代表者 |
森川 耿右 公益財団法人国際高等研究所, チーフリサーチフェロー (80012665)
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研究分担者 |
津中 康央 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特任講師 (40551552) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | DNAトランスアクション / クロマチンリモデリング / 構造生物学 |
研究実績の概要 |
まず、ヌクレオソームポジショニングが最も強い601配列を用いて、Nick(切れ目)をヌクレオソーム立体構造上の任意の位置に組み込んだDNAを数十種類ほど、構築を試みた。これらのDNAとヒストンを用いて、モノヌクレオソームの再構成を行った。作製できたこれらのNickヌクレオソームに対して、熱安定性解析、MNase処理、DNase I処理などを行い、ヌクレオソーム構造が維持されていることを確認した。また、Nickヌクレオソームの中でも特に安定性の高いものに関しては、結晶化を試みた。いくつか結晶化に成功したが、X線結晶構造解析により、立体構造を明らかにするには分解能が低く、構造決定にはいたっていない。次に上記で作製したNickヌクレオソーム を用いて、クロマチンリモデリング因子CHD1やFACTとの結合性を解析した。特にヒストンシャペロンFACTとの結合性に関して、興味深い結果をえた。二本鎖DNAのうち、片方のDNAだけに切れ目を入れたシングルNickヌクレオソームに対してFACTは全く結合せず、複合体を形成しなかった。それに対して、制限酵素により二本鎖DNAのうち、両方のDNAに切断の入ったヌクレオソームはFACTに強く結合し、安定な複合体を形成した。今後はこのヌクレオソームとFACTの結合について詳しく解析する必要がある。 また、当初の予定では、生体内からNick切断部位の残存したクロマチンを取得する予定であった。しかし、おそらくゲノムの不安定化が原因のため、Nick切断部位の残存した生体内クロマチンについては取得する事ができなかった。それゆえ、実験計画の大幅な変更を余儀なくされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Nick切断部位の残存した生体内クロマチンを取得することが困難であり、研究計画の変更を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、FACTやCHD1以外のヒストンシャペロンやATP依存的クロマチンリモデリング因子でもNickヌクレオソームに対して親和性があるのか否か、について調べる。つまり、Nickが挿入されたヌクレオソームに結合するクロマチンリモデリング因子の探索である。まず、次にあげる蛋白質についてNickヌクレオソームとの相互作用解析、Nick位置の結合選択性解析を行う。ヒストンシャペロンに関しては、ヒストンH2A/H2B二量体に結合するNAP1、ヒストンH3/H4四量体に結合できるCIA1/Asf1, Spt6を調べる事を計画している。いずれの蛋白質も単一サブユニットで機能し、単独の立体構造が既に報告されている。これらヒストンシャペロン群の解析で、ヌクレオソーム上のNick位置の結合選択性がそれぞれでどう変化するのかを比較検討する。またATP依存性クロマチンリモデリング因子に関しては、複製と転写の過程で機能する事がわかっているACF1を試す事を考えている。ATP依存的なヌクレオソームスライディング活性の測定など、機能解析も行う。
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