研究課題/領域番号 |
26251013
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高井 義美 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60093514)
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研究分担者 |
下野 洋平 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90594630)
水谷 清人 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50559177)
宮田 宗明 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90582007)
溝口 明 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90181916)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞情報伝達機構 / 細胞接着・運動 |
研究実績の概要 |
生体内では隣り合う同種あるいは異種の細胞が接着して組織・臓器を形成・維持している。同種の細胞同士はカドヘリンにより接着しているが、異種の細胞の接着機構は充分には理解されていない。研究代表者らは、新規の細胞間接着分子であるネクチンとこれをアクチン細胞骨格に連結するアファディンとからなる新しい細胞間接着装置を発見し、この細胞間接着装置が、精巣での精子細胞とセルトリ細胞との異種細胞間接着と精子細胞の分化を制御すること、内耳コルチ器の感覚上皮での有毛細胞と支持細胞の異種細胞間接着とこれらの細胞からなる市松様配列を制御することを解明した。しかし、生体内の多くの組織・臓器では精巣や感覚器とは異なるタイプやより複雑な異種細胞間接着が存在している。本研究では、これらの異種細胞間接着に果たすネクチンとその関連分子の機能と作用機構を解析し、組織・臓器の新たな形成・維持機構を解明することを目的としている。 平成26年度は、前述した目的を達成するために、乳腺の乳管や乳管葉を構成する管腔上皮細胞と筋上皮細胞の間に存在する異種細胞間接着装置におけるネクチンの機能、および妊娠期の乳腺の発達への関与を解析した。その結果、ネクチンを含む本異種細胞間接着装置が全く新規の細胞間接着装置であること、およびネクチンがプロラクチン受容体と結合してその活性を制御することを見出した。また、単層で多数の異種細胞が配置されている組織として小腸上皮組織を解析対象とし、小腸上皮組織に存在する種々の異種細胞間接着装置の構成分子を同定するために、ネクチンとNeclの発現パターンとその機能を解析した。その結果、小腸上皮のパネート細胞の局在の制御におけるアファディンの重要性を解明した。さらに、アストロサイトと神経細胞との異種細胞間接着機構におけるネクチンとNeclの発現と機能、作用機構を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、①管腔上皮細胞の基底側と筋上皮細胞の頭頂側で接着している組織として外分泌組織を、②単層で多数の異種細胞が配置されている組織として小腸上皮組織を、③上皮組織以外で複雑な異種細胞間接着をしている組織として神経組織をそれぞれ解析対象として、これらの組織での異種細胞間接着の機構と機能におけるネクチンとその関連分子の機能と作用機構の解析を進めてきた。①ではネクチンを含む本異種細胞間接着装置が全く新規の細胞間接着装置であることを見出しており、論文発表に向けた準備を進めている。②では、小腸上皮細胞のパネート細胞の局在の制御におけるアファディンの重要性を解明し、PLoS One誌にその成果を報告した。③では、アストロサイトにおけるネクチンの結合タンパク質を同定するとともにそれらのタンパク質の機能解析を進めてきた。本研究の成果は新しい疾患の診断法や治療法の開発にも繋がるものであり、生物学的・医学的・社会的にも今後の発展が期待できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上述した研究計画のうち、①に関しては論文発表に向けた準備を進めるとともに、各種のネクチンノックアウトマウスの解析および同様の管腔構造をもつ耳下腺や顎下腺などの他の外分泌組織の解析を進める。②に関しては、腸管上皮の器官培養方などを活用し、ネクチンとNeclの発現パターンの解析を進めるとともに、小腸上皮組織の各細胞のターンオーバーおよび移動と分布の制御におけるNotchシグナルはEph-エフリン系とネクチンおよびその関連分子との相互作用を解析する。③に関しては、アストロサイトと神経細胞の共培養系を用いてアストロサイトのネクチンによる神経細胞の生存とシナプス維持の制御機構の解析を推進する。
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