研究課題
生体内では隣り合う同種あるいは異種の細胞が接着して組織・臓器を形成・維持している。同種の細胞同士はカドヘリンにより接着しているが、異種の細胞の接着機構は充分には理解されていない。研究代表者らは、ネクチンとアファディンとからなる細胞間接着装置を発見し、この細胞間接着装置が、精巣での精子細胞とセルトリ細胞間や、内耳コルチ器の感覚上皮での有毛細胞と支持細胞間での異種細胞間接着の形成を制御することを解明した。しかし、生体内の多くの組織・臓器では精巣や感覚器とは異なるタイプの異種細胞間接着が存在している。本研究では、異種細胞間接着におけるネクチンとその関連分子の機能と作用機構を解析し、組織・臓器の新たな形成・維持機構を解明することを目的としている。前年度、乳腺の乳管や乳管葉を構成する管腔上皮細胞と筋上皮細胞の間に存在するネクチン-4とネクチン-1による異種細胞間接着装置によるプロラクチン受容体に対する作用機構を解析し、ネクチン-4がプロラクチン受容体に結合することによってその下流のシグナル伝達を増強していることを明らかにした。本年度はその詳細な作用機構を解析し、ネクチン-4は、その細胞外領域がプロラクチン受容体と、その細胞内領域がSOCS1とそれぞれ結合し、SOCS1を介してJAK2-STAT5系を増強してプロラクチンによる乳葉分化を促進していることを明らかにした。また、アルツハイマー型認知症との関連が指摘されているネクチン-2が、脳の血管の基底膜に接するアストロサイトのエンドフットに局在していることと、本遺伝子欠損マウスでは、加齢に伴い、大脳皮質の神経細胞が減少し、脳室が拡大していることを明らかにした。アルツハイマー型認知症の患者でも同様の所見が認められるため、ネクチン-2が本疾患の病態の進展に関与していると推測された。このように、本研究の当初の計画はほぼ達成することができた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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