研究実績の概要 |
本研究課題のうち(4)“アクチン重合体のもう一つの状態”の研究中、私たちは蛋白質fragminのアクチン重合体への結合を調べている過程で、重大な新発見をした。1990年に単量体アクチン (G型アクチン) の結晶構造が解明され、2009年には我々によって重合に伴うアクチン分子の形状遷移(G型からF型へ)が発見されたが、F型アクチンの高分解能の結晶構造は未知であった。私たちは今回、fragmin/アクチン= 1/1, 1/2, 2/4の3種の複合体の結晶を得た。これらにはF型アクチンが含まれ、その高分解能構造(分解能1.5A)が初めて解明された。それによって、アクチンのATP加水分解反応、および会合反応のメカニズムについてすでに重要な知見が得られた。またcofilin/アクチン線維の電子顕微鏡構造解析(3.8A分解能)よりアクチンは第3の形態(C型)をとることが明らかとなった。細胞運動の基礎にあるアクチンのATP加水分解(化学過程)、分子の形態変化、重合・脱重合サイクル(物理過程)の間でのエネルギーのやりとりが明らかになりつつある。 課題(1) “「細い線維」のEM構造解析“では、新開発した走査型透過電顕を使った単粒子解析によって、アクチン・トロポミオシン・トロポニンからなる再構成「細い線維」中でのトロポニン分子の向き、トロポミオシン分子のつぎ目の位置などが新たに解明された。Ca2+イオン存在下でのよいEM像を得ることが次の課題である。課題(2)”長さの揃った「ミニ線維」の再構成”および課題(3)”Tmodによるアクチン/Tm線維のP端止め構造の解明”では、トロポモジュリン(Tmod)とトロポミオシン(Tm)線維のつぎ目のアミノ酸配列を修正した結果、再構成した「ミニ線維」の安定度を改善した。電顕での均一性の確認と、「ミニ線維」がCa2+で調節されている点の確認が今後の課題である。
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