1)生体におけるオートファジー亢進の影響の検討 オートファジーの亢進によってアルツハイマー病を改善する治療戦略が考えられているが、オートファジーの持続的亢進が実際に生体に何をもたらすかはほとんど知られていない。我々が同定したオートファジーの負の制御因子Rubiconの発現を遺伝子破壊などで抑制すると、オートファジーの持続的亢進状態を人為的に作ることが可能である。そこで中枢神経特異的Rubicon KOマウスを作成し、神経変性疾患の病態が改善されるか検討した。具体的にはαシンヌクレイン線維をマウスの脳内に直接注入し10ヶ月後に脳切片を染色しαシンヌクレイン凝集塊の組織内伝播を定量化した。その結果、中枢神経特異的Rubicon KOマウスはコントロールマウスに比べ有意に凝集塊伝播が抑制されていることが判明した。線虫においてもRubiconホモログが存在することを見出したので、Rubiconのノックダウンを行い、線虫における神経変性疾患モデルである延長ポリグルタミン含有タンパク質の凝集塊形成を検討したところ、Rubiconノックダウンによって凝集塊形成が抑制された。 2)神経変性疾患抑制を目的とした低分子化合物・内在性タンパク質の探索 ラパマイシンやラパログは、栄養条件に反応してオートファジーを含む様々な細胞機能を制御するたんぱく質キナーゼmTORの阻害によりオートファジーを活性化する。mTORは、オートファジー以外にもたんぱく質合成など重要な細胞機能を多数支配しており、その阻害は広範な影響をもたらす。よりオートファジー特異性の高い亢進剤を同定するため、低分子化合物のスクリーニングを実施し複数の候補を得た。また神経変性疾患治療法開発の標的候補となるオートファジー制御タンパク質を探索するため、プロテオミクス解析とsiRNAスクリーニングを実施し複数の候補タンパク質を同定した。
|