研究課題/領域番号 |
26251025
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
相賀 裕美子 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 教授 (50221271)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生殖細胞 / Nanso2 / Nanos3 / 精子形成 |
研究実績の概要 |
Nanos2-DND1, Nanos3-DND1を強制発現できるES細胞を確立した。強制発現によって細胞の増殖が抑制され、これはこれまで生殖細胞で知られているNanos2の機能と類似している。これらの細胞からRNAを調整し、マイクロアレイ解析を行った。遺伝子の変動は両者で必ずしも似ていない。特異的な標的RNAを持つ可能性を示唆している。 我々はすでにNanos2がN-末でCNOT1と結合しRNAの分解に関与することを示しているが、その標的RNAを認識する分子機構は不見出し、DND1のcKOマウスを作製し解析を進めてきた。その結果、DND1がないとNanos2は標的RNAと結合できないことが明らかになりDND1がRNAの特異性を規定していることを証明することができた。 一方、Nanos3のcKOマウスの解析の結果、生後にNanos3を欠損すると生後2週目以降に精巣サイズが矮小化することがわかった。しかし興味深いことに、精子形成分化そのものは比較的正常におこりNanos3がなくても精子の形成は観察された。一方、Nanos3を強制発現すると、マウスは不妊になり、精子形成も異常をきたした。しかし未分化性の維持に機能するNanos2の強制発現とは明らかに表現型が異なり,精子形成過程において、Nanos2とNanos3は単に発現細胞が異なるだけでなく、明らかに異なる機能を持つと考えられる。これは先に記載したES細胞にNanos2あるいはNanos3を強制発現した際に起こる遺伝子発現変動に差があることからも支持される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Nanos3の機能解析が進んできたのでNanos2との比較解析やキメラ蛋白質を用いた解析が予想より進んでいる。いくつかのキメラ蛋白質を持ったマウスをすでに作成しており、それらのマウスの解析によりNanos2とNanos3の違いが明らかになると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Nanos2に関しては標的RNAの解析が進んでいるがNanos3に関してはまだ情報が得られていいない、初期のPGCを対象にした免疫沈降実験は不可能なので、生後の精子形成過程に発現するNanos3に焦点を絞って標的RNAを同定する。また生殖細胞ではないので、機能的には問えないが、ESを用いた強制発現系において、Nanos2とNanos3の結合形式の違いの解析は可能である。すでにTET誘導系を確立したので、今後この系を用いて解析する。
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