研究課題/領域番号 |
26251032
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
島崎 研一郎 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00124347)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 気孔 / 光情報伝達 / イオン輸送 / タンパク質リン酸化 / フォトトロピン |
研究実績の概要 |
リン酸化プロテオーム解析により、青色光によってリン酸化される複数のタンパク質を同定し、その中にキナーゼ1と仮に名付けたものが存在した。キナーゼ1の変異株の光による気孔開口はサーモグラフィーによってほとんど野生型と違いはなかった。そこで、キナーゼ1と近縁のキナーゼ2の変異株を取得した。キナーゼ2変異株はわずかに青色光による気孔開口が阻害されていた。次に、キナーゼ1と2の二重変異体を作出した。この変異株の光による気孔開口は大きく阻害されていた。そこで、気孔開口の駆動力を形成する細胞膜H+-ATPaseのリン酸化と孔辺細胞プロトプラストからのH+放出を測定した。意外なことに、二重変異株はいずれも野生型と違いがなかった。 この二重変異株では、気孔開口に必須のK+チャネルが阻害されているか、あるいは、気孔閉鎖を駆動する陰イオンチャネルが促進されているかの、いずれかの可能性が考えられた。孔辺細胞には過剰量のK+ チャネルの発現が知られるので、前者の可能性は低い。この研究過程で変異株の表皮の一旦開口した気孔が光の存在下でも閉じることに気がついた。これは、気孔閉鎖系が光条件でも働く事を示している。光条件では陰イオンチャネルはその働きを抑制されていることが必要で、その抑制過程に2つのキナーゼが関与すると考えた。そこで、閉じる傾向にある変異株に陰イオンチャネルの阻害剤を添加しておくと野生株同様に閉じなくなった。この事実は、陰イオンチャネルが青色光により阻害されることが必要で、この過程に上記2つのキナーゼの関与が考えられた。現在、より直接的証拠を得る実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
青色光による気孔開口の変異株を選抜し、気孔開口の駆動力となる細胞膜H+-ATPaseに変異が見つかった。別の変異株では細胞膜H+-ATPaseは正常で、その情報伝達系が傷んでいるものが見つかった。現在、原因遺伝子の同定を進めている。リン酸化プロテオームにより2つの新規キナーゼが気孔開口に影響を及ぼす事が解明された。以上の事から、研究目標をほぼ達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上記の研究から、解明しなければならないのは原因遺伝子をマッピングにより同定する事。さらに、リン酸化プロテオームにより同定されたキナーゼの生理的役割を解明する事である。この変異体では光による細胞膜H+-ATPaseのリン酸化は全く正常なので、原因を特定する必要がある。現在、その原因として陰イオンチャネルの制御を考えており、電気生理学的測定を行う予定である。
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