研究課題/領域番号 |
26251033
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
皆川 純 基礎生物学研究所, 環境光生物学研究部門, 教授 (80280725)
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研究分担者 |
得津 隆太郎 基礎生物学研究所, 環境光生物学研究部門, 助教 (60613940)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光合成 |
研究実績の概要 |
光合成系の集光システムが環境の変化に対応し最適化される「光環境適応機構」は,近年研究が進み,そのしくみは分子レベルで理解されるようになった.しかし,それらが「なぜ」「どのように」重要なのかがはっきりしない.このしくみの欠損変異株の多くは正常に生育するように見えるからである.本研究では,野外で見られる木漏れ日,撹拌等の「光のちらつき(変動光)」への光合成系の順化こそが,光環境適応の本質である可能性を追求する.従来全く行われてこなかった変動光下の光合成生産性の詳細な解析,変動光下の光環境適応能力を詳細に解析する.本研究は,光合成生物が進化の過程でなぜ何段階にもわたる精緻な光環境適応機構を発達させたのか,今日の光合成生物がなぜそれらを日々発動しているのか,その理由を明らかにすることを目的としている. 当該年度には、変動光を模した光バイオリアクターによる室内実験系を用いて、屋外を模した24時間光温度周期サイクルに細胞を供したところ、春季/秋季条件では昼間に大きく光合成活性が低下するものの、夏季条件ではそれが起きないことがわかった。これは、朝方の強光によって光化学系が損傷した際、それが低温環境時に起こると修復できないことを意味しており、それは同様の現象は夏季には見られないことから明らかであった。また、藻類がこれに適応するすべを備えていることも明らかとなった。さらに、光環境適応能力変異株の獲得も集中的に行った。その結果、光阻害の被害を軽減するタンパク質であるLHCSR3の誘導にかかわる変異株が複数得られており、その解析が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)屋外環境を模した光バイオリアクターによる室内実験系を用いた研究と(2)光環境適応能力変異株の獲得を集中的に行った。(1)において従来の室内実験系では得られない全く新しい屋外変動光環境ならではストレス現象の一端が明らかになったために、これは順調に進行している。さらにその藻類がこのストレス現象に対する順化機構を有することを明らかにでき、その分子メカニズム解明への道が開かれたために、これも順調に進行している。(2)においては変動光環境適応機構の主要タンパク質であるLHCSR3の誘導にかかわる変異株が複数得られており、今後の解析によって藻類の光環境適応の根幹メカニズムに迫る最適なツールとなる可能性が高いため重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
変動光下での光合成生理解析にある程度めどがつき、また末端分子因子がはっきりしたために、今後の研究の焦点は末端分子因子発現誘導メカニズムの解明に移る。そして、そのための最重要ツールである変異株がすでに複数獲得されたため、変異株取得システムの構築は成功している。今後はこれらの変異株の解析に全力を挙げるとともに、さらに変異株を取得しまったん分子因子発現誘導メカニズムの解明を行う。
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