研究実績の概要 |
減数分裂は、有性生殖を行う真核生物にとってゲノムを子孫に継承するための普遍的で重要なプロセスである。減数分裂においては、相同染色体の対合・組み換えが必須であるが、これを実現するために特有のクロマチン構造が作られる。本研究では、生細胞蛍光イメージングと分子遺伝学の手法を併用して、相同染色体組換えに伴って形成される減数分裂期クロマチン構造の分子基盤と形成メカニズムを明らかにする。減数分裂に特有のクロマチン構造として、相同染色体の相互認識部位の構造、DNA二重鎖切断部部位の構造、相同染色体の組換え中間体およびキアズマを解析する。減数分裂に障害を持つ変異株のクロマチン構造を解析し、原因遺伝子産物と異常の因果関係を明らかにする。このような構造の構成成分を生化学的に同定し、当該遺伝子の改変や破壊による機能解析とイメージング解析を行うことによって、その分子メカニズムを解明する。 平成27年度は、減数分裂に特有に形成されるクロマチン構造のイメージング解析を行った。分裂酵母の種々の変異体を用いて、減数分裂期の進行を生細胞イメージングにより追跡し、ヒストンH4の修飾が減数分裂前期の進行に影響することを明らかにした。その成果を論文として報告した(Ruan et al., 2015)。また、核膜孔複合体タンパク質の一つNup132を欠損すると、減数分裂の染色体分離に異常が出ることを見いだし、論文として報告した(Yang et al., 2015)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分裂酵母において、核膜孔複合体タンパク質やヒストン修飾が減数分裂前期の進行に影響することを明らかにし、その成果を国際学術誌に論文として報告した (Yang et al., J Cell Biology, 2015; Ruan et al., Scientific Reports, 2015)。これらを含めて、国際学術誌に論文を17編発表した。また、超分解能顕微鏡法として3D-SIM (3次元Structured Illumination Microscope) を用いて、分裂酵母クロマチン構造の高分解能観察を実現し (Matsuda et al., Nature Commun., 2015)、広範に利用できる手法となっている。これらの成果について、国際会議での発表を13件行うなど、未発表のもの含めて着実に成果が得られており、研究はおおむね順調に進展している。
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