研究実績の概要 |
減数分裂は、有性生殖を行う真核生物にとってゲノムを子孫に継承するための普遍的で重要なプロセスである。減数分裂においては、相同染色体の対合・組み換えが必須であるが、これを実現するために特有のクロマチン構造が作られる。本研究では、生細胞蛍光イメージングと分子遺伝学の手法を併用して、相同染色体組換えに伴って形成される減数分裂期クロマチン構造の分子基盤と形成メカニズムを明らかにする。そのために、減数分裂に障害を持つ変異株のクロマチン構造を解析し、原因遺伝子産物と異常の因果関係を明らかにするとともに、当該遺伝子の改変や破壊による機能解析とイメージング解析を行うことによって、その分子メカニズムを解明する。 平成28年度は、超分解能顕微鏡法3D-SIM (Structured Illumination Microscope)を用い、分裂酵母の減数分裂期のクロマチン構造を高分解能解析することにより、クロマチンをトレースすることを実現した。この方法を用いて、コヒーシンなどの変異体でクロマチン構造を解析することにより、コヒーシンが作るクロマチン構造が相同染色体対合に必須であることを示し、論文として報告した(Ding et al., Chromosoma, 2016; Ding et al., Curr. Genet., 2016)。また、減数分裂の進行を制御する仕組みとして、APC/C プロテアソームの活性化制御が2段階に起こることを、分裂酵母の各種の遺伝子破壊によって明らかにし、論文として報告した(Chikashige et al., FEBS Lett., 2017)。さらに、減数分裂細胞においてLipid Dropletの観察を行ったところ、脂肪酸合成酵素を欠損すると胞子の生存に異常が出ることを発見し、論文として報告した(Yang et al., Biol. Open, 2017)。
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