研究課題
北海道羊ヶ丘植栽ブナ林および新潟県苗場天然ブナ林において,遺伝解析および栄養塩量分析用のサンプルを1ヶ月間隔で継続的に採取した.各個体から3本の枝を選定し,枝毎に3つの芽,葉,枝のセットを毎回採取した.得られたサンプルを用いてフロリゲンとして知られるFLOWERING LOCUS T(FT)および花芽分裂組織決定遺伝子である LEAFY(LFY)やAPETALA1(AP1)の発現量の季節変化をquantitative real-time PCRによって追跡し,2年目のデータを蓄積した.結果を地域間で比較し,花芽分化の時期が地域毎にどのように異なるかを分析した結果、新潟個体群ではFT発現量がピークを迎える時期が羊ヶ丘調査地よりも遅れる可能性が示唆された.また,イオン交換樹脂を利用した土壌中の簡易モニターもH26年度と同様に実施し,土壌中の栄養塩濃度の季節変化および年変化を明らかにするためのデータを蓄積した.その結果、新潟個体群が生息する土壌では硝酸態窒素とリンが欠乏していることが示された。熱帯多雨林においてもShorea leprosula,S. macrophylla、S. siamensisを対象に,ブナと同じ方法で遺伝解析および栄養塩量分析用のサンプルを1ヶ月間隔で継続的に採取した.採取されたサンプルを用いて,quantitative real-time PCRによってFT, LFY遺伝子の発現解析をマレーシア森林研究所の設備を利用して継続して実施した.植物体内と土壌中の栄養塩濃度を,ブナと同様の方法で実施し,2年目のデータを蓄積した.開花フェノロジー長期データと気象データを用いた分析については、現在論文としてとりまとめ、投稿間近の段階である。開花遺伝子発現解析に関するデータもとりまとめ、論文執筆に着手した。
2: おおむね順調に進展している
開花遺伝子発現量の季節変化と土壌中の栄養塩データは、温帯地域と熱帯地域の両者で順調に蓄積されている。また、開花フェノロジー長期データと気象データを用いた分析については、低温と乾燥の両方が開花のトリガーとなる可能性をデータから明確に示された。このことは、長年の謎であった一斉開花メカニズムを明らかにすることに大きく役立つと考えられる。
これまで通り研究を推進しデータをさらに蓄積するとともに、最終年度は成果のとりまとめと成果発表にも力を注ぐ。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件)
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