研究課題/領域番号 |
26251048
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中務 眞人 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00227828)
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研究分担者 |
森本 直記 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70722966)
山田 重人 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80432384)
荻原 直道 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70324605)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人類進化 / 大型類人猿 / 比較解剖 / バーチャル解剖 / 個体発生 |
研究実績の概要 |
ヒトと大型類人猿の骨格の成長様式を胎児から成体まで比較する目的で、分析を行った。ヒト胎児標本42体、チンパンジー同27体の液浸標本をCT撮像し、三次元再構築像から骨格を抽出し、11項目の計測値(脊柱長、前肢・後肢節長)を計算機上で計測し、それらの成長変化を分析した。ここにおいて骨長とは骨幹の長さを意味する。個々の胸椎と様椎の長さの比率(平均値の比)は、胎児期を通して、ヒトとチンパンジーで同じであった。この傾向は成体まで続くと考えられた。肢間示数は、両種とも胎児期を通じて減少したが、その程度はヒトの方で顕著であった。一方、橈骨長と上腕骨は、調査した成長期間に関する限り両種ともアイソメトリーな変化を示し、これらの比である腕示数はどの段階でもチンパンジーの方が高かった。一方、脚示数(脛骨長/大腿骨長)は成長と共に増加する傾向が認められた。 両種の計測値を全て含んで主成分分析を行成った結果、第一主成分(PC1)が90.1%、第二主成分(PC2)が5.4%の寄与率を示した。両主成分について院試負荷量を計算したところ、計測項目は、腰椎、頸椎と胸椎、大腿骨・脛骨、その他の計測項目の4つのグループに分類することが可能であった。また、成長にともなう自由上肢・下肢の相対的伸長が両種において認められた。 主成分分析の結果より、共通の成長傾向を仮定し、両種がそれより逸脱する傾向を分析し、以下の結果が得られた。チンパンジーとヒトは成長期の初期から異なったプロポーションを持ち、成長とともに差が拡大する。新生児標本の主成分特典を比較すると、ヒトはチンパンジーよりも未熟な状態で誕生している。チンパンジーの方がプロポーション変化がより速く、ヒトよりも早く成体のプロポーションに近づく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト、チンパンジーの骨格系の成長については、胎児期の広い範囲をカバーするデータを集め、骨格プロポーションの成長変化についての一般的傾向を両種で数量的に抽出することに成功した。これは、これまで全く知られていなかった情報であり、これら二種の特殊化過程を考察する上で、非常に大きな手がかりとなる。このように十分な分析は進んでいる一方で、さらに追加資料として、チンパンジーについては、これらの他に胎児標本の撮影もすませており、より信頼性の高いデータベースを構築することが可能である。また、生後成長途中のチンパンジーの骨格データも少数(4体)ながら計測し、既存のヒトデータと共に分析に供する準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト、チンパンジーの骨格系の成長について、胎児期については十分な分析を行う事ができている。これまで、成体の資料を外挿して、生後の成長期の成長パターンを推測してきたが、成長途上個体のCTデータはすでに入手しているので、それらから計測を行って、胎児期から連続した成長様式を明らかにする。それらのデータ上に、より資料数は限定的となるものの、ゴリラのデータを落とすことで、これら3種の成長様式の類似性・被類似性について考察を行う。 ゴリラのデータについては、成体のデータを撮影したほか、アメリカ自然史博物館、スミソニアン博物館標本の資料を用いる予定である。 こうした分析結果については、秋以降に開かれる国内・国際学会において発表し、第一報の研究論文投稿までは年度内に済ませる予定である。
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