研究課題/領域番号 |
26252015
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小鹿 一 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50152492)
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研究分担者 |
矢島 新 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (30328546)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 疫病菌 / 交配ホルモン / 受容体 / 生合成 |
研究実績の概要 |
作物感染性の疫病菌の多くは有性生殖を行い、薬剤耐性化など悪性化の要因とされる。この有性生殖は交配ホルモン(α1とα2)により開始されることから、本研究課題ではホルモン受容体の同定と下流シグナル伝達機構、ホルモン生合成機構を解明することで、疫病菌有性生殖の分子基盤の確立を目指す。これまで生化学的アプローチによりα1受容体の探索とα2生合成酵素について検討してきたが成功しなかった。そこで平成29年度はトランスクリプトーム解析を基盤にした研究を進めた。 (1)菌株の選択: 疫病菌保存株約70について、ペーパーディスク法によるホルモン応答性(受容体の発現レベルの指標)と液体培養とLC/MS定量法によるホルモン生産性(生合成酵素の発現レベルの指標)を継時的に調べた。その結果、ゲノム情報が入手できる2種についてホルモン応答性・生産性の高低に着目して、P. nicotianaeの4株とP. capsiciの3株を選択した。 (2)次世代シーケンサーによるRNA-Seq解析: 培養日数の違いも含めてP. nicotianaeの菌体7点とP. capsiciの菌体6点からtotal RNAを抽出し、計13試料のRNA-Seq解析を行った(理研へ依頼)。シーケンシングにおけるリード数は1試料あたり2,400万-3,200万、ゲノムへのマッピング率は86-92%であった。また、発現比較解析は21ペアについて行い、その内訳はP. nicotianaeでα1応答の有無4ペア、α2応答の有無7ペア、α1生産性の有無1ペア、α2生産性の有無1ペア、P. capsiciでα1応答の有無2ペア、α2応答の有無2ペア、α1生産性の有無2ペア、α2生産性の有無2ペアであった。現在、受容体・生合成酵素の候補遺伝子の絞込みを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究期間の前半2年間において、受容体タンパク質および生合成酵素を直接捉えるべく研究を進めてきたが、おそらくタンパク質の発現量の低さや不安定さが原因で生化学的アプローチは極めて困難であることが判ってきた。そこで、平成28年度の途中でトランスクリプトーム解析へと大きく方針転換をした。最近、次世代シーケンサ―による1回目のRNA-Seq解析を達成し、受容体・生合成酵素の候補遺伝子の絞込みがスタートしたばかりである。従って、研究期間内では候補遺伝子の絞込みと異種発現までは達成できるものの、タンパク質レベルでの証明および受容体下流のシグナル伝達経路の解明は困難が予想されるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、トランスクリプトーム解析に集中して研究を進める。前記のように最近、RNA-Seq解析データを取得できたので、ホルモン応答性の高い菌体および生産性の高い菌体で数倍以上発現上昇する遺伝子を詳細に解析することで、受容体・生合成酵素の一次候補遺伝子をリストアップする。受容体は細胞質・核内タイプ(転写因子)と予想されるので、DNA結合領域など保存配列領域に着目してさらに絞込みを行う。生合成酵素はフィトールを水酸化する酸化酵素(おそらくシトクロームP450)と予想しているので配列類似性で絞り込む。両候補遺伝子が概ね10件に絞り込まれたら、組換えタンパク質の調製と機能解析(ホルモン結合・生成実験)を順次行って、受容体と生合成酵素の特定を進める。
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