研究課題/領域番号 |
26252016
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原 博 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70198894)
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研究分担者 |
比良 徹 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10396301)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 消化管ホルモン |
研究実績の概要 |
食事摂取後の消化管ホルモン分泌動態を調べるため、まず普通食の自由摂取下での試験を行った。一夜絶食させたラットに、普通食(AIN-93G)を自由摂取させ、飼料摂取前および摂取後120分まで経時的に採血を行い、血漿中のtotal GLP-1濃度をELISAキットにて測定した。その結果、体重250グラムのラットは、一夜絶食後の再給餌で、最初の15分間に約4 gの飼料を摂取した。その後、120分までで合計7 g強の飼料を摂取した。血中のGLP-1濃度は摂取15分後から0分値に比べて有意に上昇し、60分をピークに120分まで高値(基礎分泌の2-3倍)を維持した。 自由摂取後のGLP-1分泌応答が解析可能であることを確認した上で、門脈カニュレーションラットを用いた同様の食事負荷試験において採取した門脈血漿を用いて、マルチプレックスにて他のホルモン、サイトカインを一斉分析した。その結果、消化管ホルモンのうち、GLP-1、GIP、PYYの血中濃度が食後に上昇すること、食欲を亢進するグレリンは低下することが観察された。インスリン分泌の上昇も確認され、マルチプレックスを用いた本試験系にて食後ホルモン分泌応答を一斉にモニタリングできることが確認された。 次に、食事負荷試験の際に、乳カゼインをたんぱく源としたコントロール食と、トウモロコシZeinをたんぱく源としたZein食を用い、食事負荷後の門脈血を採取した。その結果、食後30分においてZein食群がコントロール食群に比べて高い血中GLP-1濃度を示した。このことから、Zeinを飼料に混合して摂取させることで、それまでにZein加水分解物(ペプチド)単回経口投与で見られたように、GLP-1分泌が強く促進されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、食事負荷試験において、食後の種々のホルモン分泌応答を解析可能となった。また、Zeinを含む飼料の摂取で高いGLP-1分泌応答が観察されたことで、食事組成の違いに対する各種ホルモン分泌応答の解析ならびに、消化管ホルモン分泌を強く促進する食事組成の探索が可能となった。しかしながら試験条件の検討および、マルチプレックスの機器選定に時間を要したことにより、食事組成の組み合わせの検討に着手した段階であり、現在までの達成度はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、たんぱく質・ペプチドと代表的な油脂、さらに難消化性糖質を組み合わせた食事を作成 してラットに摂取させ、各消化管ホルモン分泌を、門脈カニュレーションラットを用いて経時的に解析する 各栄養素による消化管からのホルモン分泌と脳内ホルモン発現との関連、脳神経系の消化管ホルモン作用へ の関与を明らかにする。 消化管ホルモン分泌刺激活性の高い食事摂取後の、視床下部や延髄神経核を中心に脳内各部位の神経活動を、 c-fos発現や脳内神経各部位の特異マーカーの免疫染色により解析する。これにより、食事成分による消化管ホ ルモン分泌と脳内神経活動との関係を解析する。 消化管ホルモン受容体のブロッカーなどを用いて、末梢からの消化管ホルモン刺激と脳内神経活動をc-fos発 現や脳内神経各部位の特異マーカーの免疫染色、あるいは脳内ホルモン発現を解析し、消化管ホルモン分泌およびその作用における腸と脳との関係を明らかにする。 消化管ホルモン分泌刺激活性の高い食事摂取させ、食欲抑制作用や耐糖能への影響をラットで検討する。これらの生理作用における消化管ホルモンの直接作用、および脳経由の消化管ホルモン作用を、消化管ホルモン受 容体のブロッカーや、外科的ないし薬剤による迷走神経や交感神経切除 (denervation)した動物を用いて検討し 、またそれぞれの寄与を推定する。
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