研究課題/領域番号 |
26252016
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原 博 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70198894)
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研究分担者 |
比良 徹 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10396301)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 消化管ホルモン / 食事組成 |
研究実績の概要 |
食後に分泌された消化管ホルモンを高濃度で検出するため、門脈カテーテルを留置したラットを用い、絶食後に再給餌し、無麻酔下で継時的に門脈採血を行った。乳カゼインをたんぱく源としたコントロール食と、トウモロコシZeinをたんぱく源としたZein食を摂取させると、コントロール食に比べ、Zein食群でglucagon-like peptide-1 (GLP-1)分泌が高まることが確認された。マルチプレックスでの測定により、GLP-1と同じく消化管内分泌細胞L cellより分泌されるpeptide-YY (PYY)の分泌もZein食で高まった。一方、上部消化管で産生されるglucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP)は、Zein食で早期に低下し、胃で産生されるグレリンは、Zein食摂取によりコントロール食摂取よりもさらに低下した。GLP-1、PYYは食欲抑制、グレリンは食欲亢進作用があることから、Zein食はその後の食欲を抑制することが考えられた。 タンパク源を大豆、米などに変更して同様の試験を行ったが、Zeinほどの作用は見られなかった。従って、ここで見られたGLP-1、PYY分泌促進、グレリン分泌抑制は、Zein食に特有の作用と考えられた。上記の作用は、炭水化物源をショとした食事(スクロース食)で観察されたが、炭水化物源をデンプン(スターチ食)にした場合には観察されなかった。 これらの結果より、タンパク源を変えるだけでなく、共存する炭水化物源によっても、食後消化管ホルモン分泌応答は影響を受けることが明らかとなった。しかしながら、どのような組み合わせが食後消化管ホルモン分泌応答に強い影響を与えるかについてはさらなる検討が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度においてZein食に強いGLP-1、PYY分泌促進、グレリン分泌抑制作用が見出されたが、共存する炭水化物源によってもその作用は変動することが明らかとなった。一方で、脳内神経活動の指標となるc-fos発現解析、迷走神経切除にも着手しているが、性ホルモン、消化管ホルモン分泌との関係は解析できておらず、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Zeinタンパクは不可欠アミノ酸が大幅に不足したタンパク質であり、Zeinのみをタンパク源として持続的に摂取してもアミノ酸欠乏となる。Zeinに不足するアミノ酸を補足、あるいは種々のタンパク源と混合することで、持続的に摂取可能な飼料組成を考案し、これの摂取による、消化管ホルモン分泌応答を調べる。さらに、炭水化物源、難消化性糖質添加、脂質の変更などによる影響を調べる。 また、消化管ホルモンへの影響の強い食事を用い、食後あるいは長期摂取後の脳内c-fos発現、性ホルモン発現を調べ、食事、消化管ホルモン、脳神経機能・生殖機能との関連を明らかにする。
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