食後の消化管ホルモン分泌応答を、覚醒下にて測定したところ、タンパク質源を変えることで、GLP-1、PYY、グレリンの分泌応答に影響が見られた。これら消化管ホルモンは迷走神経への作用を介して、食欲中枢である視床下部に働きかける。そこで、タンパク質源の異なる食事摂取直後の視床下部神経活動の指標となるc-fosのmRNA発現を定量PCRにより測定した。その結果、食後15分、30分において時間依存的なc-fos mRNA発現の増加が見られたが、食事のタンパク質源の違いによる明確な差異は見られなかった。同様に視床下部にて、食欲調節に関連するPOMC、AGRPならびに生殖に関連するGnRHのmRNA発現を測定したが、処理間の差異は見られなかった。これらより、消化管ホルモンの分泌に違いの見られた時間では、視床下部でのこれら摂食、生殖関連ホルモンのmRNA発現には違いが見られず、異なるタイミングでの解析が必要と考えられた。 一方で、覚醒下ラットでの回腸部腸間膜静脈からの経時的採血を可能とするカニュレーション手術に着手した。門脈と回腸腸間膜静脈の血中パラメーターを比較することで、小腸上部、下部での消化管ホルモン分泌、栄養吸収を解析することが可能となる。門脈または回腸部腸間膜静脈にカニューレを留置したラットにおいて、食後の血糖、消化管ホルモン濃度を調べたところ、グルコース濃度および上部消化管で主に産生される消化管ホルモン濃度は、門脈血で高値を示し、主に下部消化管で産生される消化管ホルモン濃度は、回腸部腸間膜静脈血で高値を示した。これにより、グルコースは上部小腸で多く吸収されることが確かめられたとともに、本モデルは消化管部位別のホルモン分泌や栄養素吸収の解析に有用であると考えられた。また、難消化性糖質を添加した食事組成により、消化管ホルモン産生の増加、食欲の抑制作用が明らかとなった。
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