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2015 年度 実績報告書

抗炎症性脂質メディエーターに関する基盤的研究

研究課題

研究課題/領域番号 26252018
研究機関東京大学

研究代表者

内田 浩二  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40203533)

研究期間 (年度) 2014-06-27 – 2018-03-31
キーワード脂質メディエーター / プロスタグランジン / 抗炎症 / タンパク質修飾 / 神経細胞分化
研究実績の概要

脂質は3大栄養素のひとつであり、細胞膜の主要な構成成分やエネルギー源であるだけでなく、外界からの刺激に応答して“脂質メディエーター”と呼ばれる生理活性脂質が産生されることで、生体防御や神経伝達などに関与するという重要な機能を有している。中でもプロスタグランジン (PG) 類は、遊離アラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ (COX) の触媒作用によって生成される主要な脂質メディエーターのひとつである。PGの一種であるPGD2は睡眠の誘発やアレルギー性炎症に関与する一方、核内受容体であるPPARγの内因性リガンドになるなどユニークな生理活性を有するJ2型PGへと代謝されることも知られている。前年度までに、PGD2の新たな変換経路が存在していることを見出すとともに、PGD2の主要な代謝物のひとつとして、二重結合の位置が12位に異性化したΔ12-PGD2を同定してきた。本年度は、質量分析装置を用いた安定同位体希釈法によるPGD2類の高感度な定量法を確立し、活性化マスト細胞の培養上清中にΔ12-PGD2が生成されることを明らかにした。さらに、PGD2代謝産物による神経細胞分化促進活性を見出した。15d-PGJ2を代表とするJ2型PG類は、神経成長因子(NGF)による神経突起伸長を増強する活性を有していることが明らかとなった。さらに、その増強作用の分子メカニズムの解明を行った結果、NGFにより細胞膜上へ移行したカルシウムチャネルのひとつであるTRPV1に直接的に結合することにより活性化し、結果として神経細胞の分化を誘導することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

安定同位体希釈法によるΔ12-PGD2などのPGD2代謝物の定量法を確立し、実際に活性化マスト細胞の培養上清中にも、Δ12-PGD2が生成することを見出した。また、PGD2代謝物による神経細胞の分化促進活性を明らかにした。さらにその作用機序として、カルシウムチャネルであるTRPV1の活性化を介したシグナル伝達機構が重要であることを明らかにした。

今後の研究の推進方策

本年度確立した安定同位体希釈法によるPG類の定量方法を用いて、in vivoにおけるPGD2代謝物の定量解析を行う。特に、マスト細胞の活性化が関与するアレルギーなどの疾患モデルにおいて、Δ12-PGD2を中心としたPGD2代謝物の定量解析と疾患との関係について解析を行っていく予定である。また、質量分析法とあわせて、免疫化学的手法による定量解析法の確立を目的として、Δ12-PGD2を中心とするPGD2代謝物に対するモノクローナル抗体の作製を試みたいと考えている。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Identification of a prostaglandin D2 metabolite as a neuritogenesis enhancer targeting the TRPV1 ion channel.2016

    • 著者名/発表者名
      Shibata, T., Takahashi, K., Matsubara, Y., Inuzuka, E., Nakashima, F., Takahashi, N., Kozai, D., Mori, Y., Uchida, K.
    • 雑誌名

      Sci. Rep.

      巻: 6 ページ: 21262

    • DOI

      10.1038/srep21261.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] レドックスバイオロジーから見た食品と生体防御反応2016

    • 著者名/発表者名
      内田浩二
    • 雑誌名

      実験医学

      巻: 34 ページ: 2370-2373

  • [学会発表] LC-ESI-MS/MSを用いた脂肪酸アミド化合物の検出定量法の確立2016

    • 著者名/発表者名
      岡本拓也、柴田貴広、内田浩二
    • 学会等名
      日本農芸化学会2016年度大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-28
  • [学会発表] プロスタグランジンD2に起因する新規脂質メディエーターの解析2015

    • 著者名/発表者名
      犬塚恵美、柴田貴広、内田浩二
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会・第88回日本生化学大会合同大会 (BMB2015)
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-12-04 – 2015-12-04
  • [学会発表] 肥満細胞が産生する脂質メディエーターによる神経細胞分化促進2015

    • 著者名/発表者名
      柴田貴広、高橋克弘、犬塚恵美、森泰生、内田浩二
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会・第88回日本生化学大会合同大会 (BMB2015)
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-12-02 – 2015-12-02
  • [図書] ヒトの基礎生化学 (川上浩、太田正人 編著)2016

    • 著者名/発表者名
      内田浩二、柴田貴広
    • 総ページ数
      260(197-202)
    • 出版者
      アイ・ケイコーポレーション

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公開日: 2018-01-16  

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