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2016 年度 実績報告書

木材細胞壁模倣多糖類マトリックス中でのリグニンの形成とその構造決定因子の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26252022
研究機関北海道大学

研究代表者

浦木 康光  北海道大学, 農学研究院, 教授 (90193961)

研究分担者 重冨 顕吾  北海道大学, 農学研究院, 講師 (20547202)
玉井 裕  北海道大学, 農学研究院, 准教授 (50281796)
吉永 新  京都大学, 農学研究科, 准教授 (60273489)
岸本 崇生  富山県立大学, 工学部, 准教授 (60312394)
高部 圭司  京都大学, 農学研究科, 教授 (70183449)
幸田 圭一  北海道大学, 農学研究院, 講師 (80322840)
研究期間 (年度) 2014-06-27 – 2018-03-31
キーワードリグニンの溶液物性 / グルコマンナン / モノリグノールの移動
研究実績の概要

本年度は、先ず、昨年エゾマツから抽出したグルコマンナンを、酢酸菌が産生するセルロースに吸着させて、木材細胞壁模倣多糖類マトリックスの調製を行った。このグルコマンナンの吸着量は、広葉樹由来のキシランより多く、セルロースとの高い親和性を示唆する結果となった。次いで、グルコマンナン多糖類マトリックス存在下での、コニフェリルアルコールの脱水素重合を検討した。キシラン吸着マトリックスと同条件で重合を試みたが、マトリックス表面にしか重合物は堆積せず、マトリックス内部には、SEM-EDX分析では存在が確認できなかった。この結果より、グルコマンナンにはキシランのようなモノリグノールを多糖類マトリックスに誘導する機能に乏しいことが示唆された。極微量生成した重合物の分析を現在試みている。
また、本年度も本課題で購入した光散乱検出器を用いて、b-O-4結合のみからなるリグニン高分子モデルの溶液物性を解析した。alpha位がカルボニルの合成中間体は、ポリスチレンと同様の溶液挙動を示したが、その還元体で目的とする高分子モデルは、ポリスチレンと同じ流体力学半径でも高分子量を示すようになり、分子がコンパクトな構造になることが示唆された。この結果は、リグニンが溶液中でコンパクトな構造を取っているという、1960年代の研究を支持するものと考える。今後は、コンパクトな構造を示す原因を解明し、木材から単離したリグニンの構造に反映するよう、NMRなどで分析を進める。
最後に、昨年度モノリグノールの多糖類マトリックス中における分布を観察するのに有用であった同位体顕微鏡を用いて、実際の樹木中での外部から投与した重水素化モノリグノールの移動を観察した。その結果、形成層付近とリグニンが堆積する古い細胞の壁孔縁で観察されるという、これまで報告されていない現象が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた、ヘミセルロースがリグニンの形成に及ぼす効果が、本年度グルコマンナンを用いることで、キシランとの違いが明確になり、第1の目的がほぼ達成された状況である。さらに、リグニンモデル高分子を用いた溶液構造の解析より、リグニンの構造と溶液中での簿王純度との関係も解明されつつあり、現状況を維持しつつ来年度の研究が進行すれば、申請時の目的が達成できると考えられるためである。

今後の研究の推進方策

来年度は、本年度の成果に基づき以下の研究を行う。
1.グルコマンナンには、キシランのようなモノリグノールを多糖類マトリックス中に誘導する効果が見られなかったので、キシランとグルコマンナン共存下でのモノリグノールの移動およびその重合性について検討する。
2.多糖類マトリックス中で合成したDHPおよび溶液中で合成したDHPの分子量を、光散乱検出器を用いて測定する。さらに、それらの構造をNMRおよび旧来からのリグニン分析法を用いて解析する。
3.免疫標識法を用いて、多糖類マトリックス中および溶液中で作製したリグニンの構造を推定する。同時に、木材中のリグニンの構造解析も試みる。
4.これらの成果を基に、DHP形成に及ぼす多糖離マトリックス中のヘミセルロースの機能を纏めると共に、ヘミセルロースの構造と関連させながらDHPの3次元構造の構築を行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Association of amphipathic lignin derivatives with cellobiohydrolase groups improves enzymatic saccharification of lignocellulosics.2017

    • 著者名/発表者名
      Y. Yamamoto, N. Cheng, K. Koda, K. Igarashi, Y. Tamai and Y. Uraki
    • 雑誌名

      Cellulose

      巻: 24 ページ: 1849-1862

    • DOI

      10.1007/s00248-017-0952-8

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 樹木組織中での安定同位体標識モノリグノール類の移動 ~同位体顕微鏡による可視化~2017

    • 著者名/発表者名
      小川真由、幸田圭一、重冨顕吾、坂本直哉、高部圭司、吉永 新、浦木康光
    • 学会等名
      第67回日本木材学会大会
    • 発表場所
      九州大学箱崎キャンパス
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-19
  • [学会発表] 偏光顕微ラマン分光法によるスギ仮道管壁におけるリグニンの配向解析2017

    • 著者名/発表者名
      有泉 慧、吉永 新、高部圭司
    • 学会等名
      第67回日本木材学会大会
    • 発表場所
      九州大学箱崎キャンパス
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-19
  • [学会発表] ヒノキの形成中仮道管壁内表面におけるセルロースとヘミセルロースの分子配置Ⅰ ーヘミセルラーゼ処理による構造変化からの考察ー2017

    • 著者名/発表者名
      櫻井みづき、高部圭司
    • 学会等名
      第67回日本木材学会大会
    • 発表場所
      アクロス福岡(福岡)
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-19
  • [学会発表] リグニンアナログの溶液中における構造2016

    • 著者名/発表者名
      重富顕吾、山本陽子、幸田圭一、岸本崇生、浦木康光
    • 学会等名
      リグニン討論会
    • 発表場所
      京都大学維持キャンパス
    • 年月日
      2016-10-27 – 2016-10-28
  • [学会発表] Monoclonal antibody directed against 8-O-4' linked structure of lignin.2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshinaga A, Wada M, Hoshikawa S, Kiyoto S, Kamitakahara H, Takabe K:
    • 学会等名
      The XIVth Cell Wall Meeting
    • 発表場所
      Chania, Greece
    • 年月日
      2016-06-12 – 2016-06-17

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公開日: 2018-01-16  

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