研究課題
昨年度の研究から、未精製グルコマンナン(GM)が存在する多糖類マトリックス中では、脱水素重合物(DHP)の形成量がキシランが存在する時より、少ないことが示された。この理由を解明するために、2つの実験を行った。一つは、GMに混在していたキシランによってDHPが生成したという仮定に基づき、キシランが混在しないGMを再調製し、DHPの形成を行った。その結果、DHPの形成量はさらに減少し、GMがDHP形成の阻害剤として機能することが明示された。この理由がGMまたはキシランとリグニン重合酵素であるHRPとの相互作用に因ると仮定して、その相互作用を解析した。結果として、キシランはHRPと相互作用するが、GMは相互作用しないとの示唆を得た。未精製GMを含有する多糖類マトリックス中に形成したDHPの構造を、免疫蛍光標識法により観測した。その結果、8-5'、8-8'と8-O-4'の単位間結合がDHPに存在することが明確になった。これまでのリグニン分析法では、多糖類に強固に結合したリグニンの構造解析は不可能であったが、本研究の複数の抗体を用いる標識法で、可視化が可能となった。最後に、DHPの分子量を光散乱検出器を備えたサイズ排除クロマトグラフ(SEC)を用いて測定することにしたが、先ず、リグニンの構造と分子量との関係を明らかにするために、8-O-4'結合のみから成るリグニン高分子モデルを用いて、分子量測定を行った。その結果、分子量とSECの保持時間との関係において、このモデル化合物は、標品となるポリスチレン(PS)に近い挙動を示した。一方、DHPは、同じ保持時間でも大きな分子量を示し、測定溶媒中では、PSよりコンパクトに密集した分子構造を取ることが明らかとなった。このことも、DHPが枝分かれ構造を有していることを支持している。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Tree Physiology
巻: 37 ページ: 1767-1775
10.1093/treephys/tpx144