研究課題/領域番号 |
26252024
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
服部 順昭 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 名誉教授 (90115915)
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研究分担者 |
安藤 恵介 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (70262227)
上川 大輔 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材改質研究領域, 主任研究員 (30409651)
近江 正陽 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70233020)
吉田 誠 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30447510)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ドリルインサイジング / レーザインサイジング / スギ / 集成材 / 2時間耐火 |
研究実績の概要 |
ドリル直径、回転数、孔あけ速度を変えて、柾目と板目のスギラミナに、繰り返しを10として、孔あけを行った。ラミナ内部の孔形状を、東京都産業技術研究センター(都産研、研究協力者である松原氏の所属機関)が所有する高性能マイクロフォーカスX線CTで撮影し、卒論で作成した市販ソフトを組み合わせた穴形状解析プログラムで解析した。その結果、板目板より柾目板にあけた孔の曲がりが顕著であること、一刃当たりの切り込み量が大きいほど曲がりが大きくなることが分かった。 スギラミナ間の接着性能をブロックせん断試験で調べ、ブロックせん断強さと木部破断率で評価したところ、常温硬化型とされるレゾルシノール接着剤でも、接着後に十分加熱すると難燃薬剤による硬化阻害が軽減されることが分かった。 難燃薬剤固定量はドリルとレーザによるインサイジングラミナ間で有意差はなく、薬剤注入処理直後の材内薬剤分布と乾燥後のそれを溶脱法にて計測し、乾燥中に薬剤が表面に集積すること、特に辺材においてその現象が顕著なことが分かった。 密度800個/m2でドリル(直径2 mm)とレーザ(直径1.8 mm以下)でインサイジングした厚さ30 mmのスギラミナに難燃薬剤を注入し積層接着した難燃薬剤処理部を2面ずつ作成し、荷重指示部にネジ留めした集成材の2時間載荷加熱試験を建材試験センターで行った。加熱終了9時間後に燃え止まったと判断されたことから、脱炉し、木ネジを外して、荷重支持部4面全面を観察したところ、スギ集成材の一部で炭化が認められた。試験中の荷重支持部の最高温度はスギ集成材部で試験開始後406分に198.6℃、カラマツ集成材部で開始後386分に204.5℃であった。難燃処理部の残存厚さはドリルインサイジング処理部で25~35 mm、レーザインサイジング処理部で33~43 mmとなり、レーザインサイジング処理部の方が多く燃え残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドリルの直径、回転数、孔あけ速度を変えて、柾目と板目のスギラミナに繰り返し10で孔をあけ、そのラミナをマイクロX線CTスキャナーで撮影し、孔の曲がりや曲がる原因を考察する実験について、撮影は終わったが、穴形状解析ソフトの開発遅れから、形状解析が遅れている。 2時間耐火性能を担保できるように設計して、加熱試験を実施したが、一部で荷重支持部表面が炭化し、2時間耐火性能を満たさないと判定された。一面の難燃処理部を木ネジ数本だけで荷重支持部に固定する方法では、加熱試験中に千度前後の加熱により、難燃処理部間に若干の隙間が発生し、そこから燃え込み、2時間耐火が実現しなかった。難燃処理部を簡単な方法で荷重支持部に固定する構造であったが、無理なことが分かり、一部の設計変更で2時間耐火性能が得られるとの開発者チームの見解が得られたことことから、次年度末の加熱試験では合格するものと予想している。
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今後の研究の推進方策 |
これまではドリルインサイジングの場合、ドリル直径が2 mmなら、加熱試験時のラミナにあけられた孔からの熱の進入が防げるとの知見であったが、それより小さい孔が望ましいとの示唆が得られたことから、少なくとも直径が1.5 mm以下のドリルで深さ40 mmまでの孔があけられるドリルインサイジング条件を、マイクロX線CTスキャナー観察で得られる曲がりの原因と蛍光X線撮影によるリン原子の分布の結果を活かして、求める。 得られたドリルインサイジング条件で孔あけした厚さ30 mmのラミナに難燃薬剤を均一に注入し、それを3層積層接着した難燃処理部を木ネジだけで荷重支持部に固定し、2時間の耐火性能を満たすスギ集成材を実現する。
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