研究課題/領域番号 |
26252025
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西尾 嘉之 京都大学, 農学研究科, 教授 (00156043)
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研究分担者 |
木村 恒久 京都大学, 農学研究科, 教授 (40264593)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セルロース / 多糖類 / アセンブリー / 異方性 / 複合材料 / キラル液晶 / 配向 / 磁性 |
研究実績の概要 |
セルロース系多糖をコア成分とした高機能異方性材料の創製に向けて、各種複合系に応じた分子アセンブリー制御を行い、以下の成果を得た。 1.外力印加型分子アセンブリー制御 (1)セルロースアセテート(CA)/ポバール(PVA)二成分系ブレンドおよびCA/PVA/ポリ(N-ビニルピロリドン)(PVP)三成分系ブレンドの相溶マップを作成した。 (2)固体NMRの緩和時間測定等によりCA/PVA/PVP相溶ブレンドの混合スケールを定量し、特にPVP成分の相溶化剤としての役割を明確化した。また、延伸フィルムの力学的性質に明確なシナジー効果を見出した。 (3)カラギーナン(CAR)/ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)IPNゲルへの酸化鉄ナノ充填に成功した。また、前年度作製のCAR/セルロースナノクリスタルの磁性フィルムがマイクロパターニング用の磁場応答材料として機能することを示した。 2.自発配向型分子アセンブリー制御 (1)エチルセルロース(EC)/ポリアクリル酸の液晶固定化フィルムを作製し炭酸カルシウムのミネラリゼーションに成功した。コレステリック特性を維持し、且つ力学性能に優れるハイブリッド材料となる。 (2)各種アシル化EC誘導体を合成し、それらのリオトロピック液晶についてキラル掌性反転挙動に及ぼす置換度・溶媒種の効果を明確にした。 (3)フッ素含有基を導入したアシル化ヒドロキシプロピルセルロース誘導体を合成しサーモトロピック液晶形成を含む相図を作成した。 3.項目1のブレンド試料に関連して、置換基分布の異なるセルロースアセテート各種をイオン液体溶媒中で合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セルロース系多糖をコア成分とした高機能異方性材料の創製に向けて、2つのアプローチAとBで配向複合化を遂行している。Aは「外力印加型分子アセンブリー制御」であり、Bは「自発配向型分子アセンブリー制御」である。 前者Aについては、(1)対象としたセルロースエステルの二成分および三成分ブレンド系について相溶マップの作成が完成しつつあること、(2)延伸ブレンドフィルムの力学的性質にシナジー効果の発現を認めたこと、(3)セルロースナノクリスタル(CNC)/藻類多糖の磁性フィルムにパターニング材料としての機能を付与できたこと、(4)磁性酸化鉄をナノ充填した多糖/ビニルポリマーIPN型ハードゲルの調製に成功したことなどから、きわめて順調である。 後者Bについても、(1)セルロース誘導体の液晶固定化フィルムを用いてCaCO3のミネラリゼーションに初めて成功したこと、(2)セルロース誘導体2種のアシル化修飾試料について分子構造と液晶キラル掌性の相間関係を議論しうる有用データ数が格段に増えたことなどから、うまく進展している。ただし、ナノクリスタルCNCの液晶固定化フィルムの試料調製が予定よりも遅延しており、それを用いたミネラリゼーションの成功例を示すには至っていない。 よって、本研究は、全体としておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
「外力印加型分子アセンブリー制御」による高機能異方性材料の創製においては、 (1)セルロースエステルの置換基分布が相溶性に及ぼす効果の検討、(2)相溶ブレンドの延伸配向に伴う光学異方性の定量評価、および(3)多糖/合成ポリマーIPN(相互侵入網目)の磁性複合ゲルの特性解析と応用例の提示を行い、前年度までのデータと併せて結果を総括する。 「自発配向型分子アセンブリー制御」による高機能異方性材料の創製においては、(1)セルロースナノクリスタルの液晶固定化フィルムについてミネラリゼーションを早期に成功させ、セルロース誘導体を用いた場合との比較検討を行う。また、(2)フェニルカルバメート類を加えた各種セルロース誘導体の液晶について、キラル掌性特性と光波分離機能を系統的に整理し、分子構造とリンクさせたモデル立案を行う。これらを基に、光学・分離機能材料等への応用を展望する。
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