研究課題
魚類の鰓に存在する塩類細胞はイオン輸送に特化し、浸透圧調節機構の中心的役割を果たしている。塩類細胞には淡水型および海水型のサブタイプが存在し、淡水性狭塩性魚であるゼブラフィッシュで同定された淡水型塩類細胞の分化誘導シグナリングのカスケードでは、foxi3a、foxi3bが下流に存在することが知られている。しかし海水型塩類細胞への分化誘導遺伝子は未だ不明である。そこで本研究は、広塩性魚であるメダカを用いて、塩類細胞の分化において転写因子として働くと考えられるfoxi3遺伝子が、塩類細胞の分化誘導にどのような機能を担うかを明らかにし、塩類細胞の分化誘導カスケードの全容解明への基礎的知見とすることを目的とした。まず、ゲノムデータベース(ensemble)とナショナルバイオリソースプロジェクトのメダカcDNAライブラリーからfoxi1, 2, および3の部分配列を同定し、さらにRACE法によりfoxi3のmRNA配列の全長を同定した。その結果、ゼブラフィッシュとは異なり、メダカではfoxi3は1種である可能性が示唆された。またメダカfoxi3は発生初期段階から淡水型および海水型全ての塩類細胞の核に発現しており、ノックダウン実験では塩類細胞数が減少し、過剰発現実験では塩類細胞数が増加した。よってfoxi3は全ての塩類細胞の分化誘導および増殖に必要な転写因子であり、foxi3のさらに下流のシグナリングによって淡水型や海水型といった各タイプの塩類細胞へと分化・誘導されることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
「海水型塩類細胞の分化誘導因子の探索」については順調に研究が進み、おおむね当初の計画通りに成果が得られた。
これまでの研究で、塩類細胞の機能および分化に関する新たな分子生物学的知見が蓄積されてきた。今後は得られた基礎的知見をもとに、カリウム/セシウム代謝機構の全貌を解明することを目指す。
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