研究課題
体内に取り込まれたセシウムの挙動を知るには、カリウムの動態を理解することが不可欠である。カリウムイオン(K+)は体内に最も多く含まれる陽イオンであり、細胞内外でのK+濃度勾配を保つことは生命維持に必須である。低K+濃度の淡水中ではK+の獲得を飼料に大きく依存すると考えられる。これまでK+の調節機構として、鰓におけるK+排出と胃におけるK+取込は独立して研究がなされてきたが、本研究では両面に焦点を当て、淡水飼育下のモザンビークティラピアを用いて、K+代謝機構を包括的に明らかにすることを目的とした。まず、摂餌後の生理的応答を経時的に観察した結果、胃におけるK+吸収と同期して血漿K+濃度の上昇が確認された。また、鰓の塩類細胞に発現しK+排出に関与するK+チャネルRomkaの発現の亢進が認められた。Romkaの発現が血漿K+濃度の変化に応答した可能性を検討するため、単離した鰓弁のK+濃度別培養実験を行った結果、高K+培養液でRomkaの発現上昇が確認された。このことから、塩類細胞は内分泌因子に依らず自律的に細胞外K+濃度の上昇を感知し、Romkaを介したK+排出機構を亢進することが示唆された。さらに、K+含有量を調整した飼料を給餌したところ、低K+餌投与後には胃でのK+取込が起こらず、血漿K+濃度およびRomka発現の上昇も確認されなかった。このことから流入するK+量が抑制されるとK+代謝機構の応答が変化する可能性が示唆された。以上の研究により、摂餌に対するK+代謝機構の応答の一端が明らかとなった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Exp. Zool. B
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