研究課題/領域番号 |
26252034
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
佐藤 秀一 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80154053)
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研究分担者 |
廣野 育生 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (00270926)
芳賀 穣 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (00432063)
吉崎 悟朗 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70281003)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 無魚粉 / 無魚油 / 塩分 / 脂肪酸 / アミノ酸 / 消化吸収率 |
研究実績の概要 |
魚粉を全く含まない無魚粉飼料、魚粉と魚油を全く含まない無魚粉・無魚油飼料、その飼料へDHAを多量に含有する微細藻類のシゾキトリム乾燥粉末を5、10、15%配合した飼料をマダイ稚魚に給餌した。その結果、無魚粉・無魚油飼料へ植物性飼料原料のみ配合した飼料ではマダイはほとんど成長しなかったが、シゾキトリウムを配合することにより成長が改善され、10%配合することに最も良い結果がえられた。また、同様の試料をブリ稚魚に給餌したところ、ブリの摂餌があまりよくなく、無魚粉・無魚油飼料では体重が減少したが、シゾキトリウムを配合した飼料では、わずかながら成長した。これらの結果から、シゾキトリウムがマダイやブリのDHA供給源になるものと思われた。 酵素処理した植物性飼料原料を高い割合で配合した飼料をニジマスに給餌した結果、低い割合で配合した飼料よりも飼育成績が劣る傾向があらわれた。この結果より、酵素による分解程度の調整が必要であると思われた。 また、ヒラメを異なる塩分で飼育した結果、低塩分で飼育すると中鎖脂肪酸の利用能が高くなることがわかった。 つぎに、ヒラメおよびコイにおけるタウリン合成経路について検討した。その結果、コイは、システアミン経路によりタウリンを合成することがわかった。ヒラメのシステイン二酸化酵素(CDO)遺伝子はニベ科のフウセイやハタ科のクエに近縁で、システインスルフィン酸脱炭酸酵素(CSD)遺伝子はマダイやブリに近縁であることを明らかにした。 アルギニンの代謝物質であるオルニチン、シトルリンを2%添加した飼料をニジマスに30日間給餌した結果、シトルリン添加区よりもアルギニン添加区で有意に成長が優れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基礎となる無魚粉飼料の配合組成については、ニジマス、コイ、ティラピア、マダイおよびブリにおいてほぼ完成している。これらの飼料へDHAを産生する微細藻類のシゾキトリウム乾燥粉末を配合することで、無魚粉・無魚油飼料が作製できることが示唆された。また、生育域の環境、特に塩分によって栄養素の利用性に影響があらわれ、魚類の成長が影響されることがわかった。多くの海水魚においても塩分の低い海水で飼育すると成長が増長されるものと示唆された。また、植物性飼料原料の加工処理についても知見が得られ、過度の酵素処理は魚の成長に良い効果はもたらさないことがわかった。 このように、研究はおおむね順調に進展しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、無魚粉・無魚油飼料を活発に摂餌される飼料の開発をするとともに、無魚粉無魚油飼料に適した飼料原料の探索と処理方法を検討する。合わせて、植物性飼料原料を配合した場合の環境負荷への効果についても検討する。また、ドコサヘキサエン酸供給源として微細藻類のシゾキトリウム以外の原料の探索も必要と思われる。これには、遺伝子組み換え植物油も検討する必要がある。これらを総合し、脂質代謝、アミノ酸代謝と飼育環境、特に塩分との相互関係に関する基礎的知見を集積し、さらに効率のよい飼料の開発を検討する。
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