研究課題/領域番号 |
26252048
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀本 泰介 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00222282)
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研究分担者 |
村上 晋 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (10636757)
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研究期間 (年度) |
2014-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ワクチン |
研究実績の概要 |
本研究は、「制限増殖性ウイルスを基盤とする動物難治性疾患の統括的制御」という題目で二つの柱で構成される。すなわち、1回感染型非増殖性ウイルスのインフルエンザワクチンへの応用、および制限増殖型腫瘍溶解性アデノウイルスによる抗ガン治療への応用、を最終目的とする。 本年度は以下の研究成果を得た。 (1)リバースジェネティクスでレスキューした NS部分欠損非増殖型ウイルスの増殖性は予想外に低く、いくつかの改善策を試みたものの成功には至らなかった。したがって、この戦略では効果的な免疫原性の誘導は困難であると考え、感染単位当たりのウイルス抗原量を増やすという方法に方針を転換した。その目的で、レオウイルス膜融合タンパク質p10の利用を考え、そのp10を発現する組換えウイルスの作製を試みたところ、その作出に成功した。このウイルスを細胞に感染させると感染細胞当たりのM1タンパク質量の有意な増加が認められた。この結果は、p10搭載ウイルスの新規のインフルエンザワクチンへの応用性を示すものである。 (2)犬アデノウイルス変異体を作製する方法を再検討し、従来法である相同性組み換え法の利用を考えた。その予備実験として、感染細胞から抽出したDNAを培養細胞にトランスフェクトすることにより、ウイルスの増殖が認められた。そこで、E1A/B欠損させるためのGFP搭載プラスミドを作製し、ウイルスDNAと同時にE1A/B欠損細胞にコトランスフェクトし、GFP発現ウイルス(E1A/B欠損ウイルス)のレスキューを試みたが、成功までには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの計画で、一部達成できないと判断される課題が見つかった。想定の範囲内ではあるが、その判断に至るまでの検証実験に時間を要し、また、方法を少し変更する必要性が出たため、当初予定した進行速度にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的は当初の予定通りで変わりはないが、より独自性を高めるために方法論の一部変更が必要になった。 (1)インフルエンザワクチンへの応用を目指す1回感染型非増殖性ウイルスの構築において、新たにレオウイルスp10タンパク質搭載組換えウイルスの利用を中心に、動物ワクチンでは必須であるワクチン個体と感染個体を区別できるDIVA機能を持つワクチンの開発を推進する。 (2)イヌを対象にする腫瘍溶解性ウイルスの構築においては、犬アデノウイルスのみでなく、新たにヒトアデノウイルスあるいはコウモリアデノウイルスをベースとする構築法を今後検討する。特に後者は、イヌアデノウイルスに最も近縁なアデノウイルスであり犬細胞への感受性が高い。コウモリアデノウイルスを所有するのは国内では私たちの研究グループのみであり、革新的な研究の推進が見込まれる。
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