研究課題
本研究は、「制限増殖性ウイルスを基盤とする動物難治性疾患の総括的制御」という題目で二つの柱で構成される。すなわち、1回感染型非増殖性ウイルスのインフルエンザワクチンへの応用、および、制限増殖型腫瘍溶解性アデノウイルスによる犬を対象とする抗ガン治療への応用、を最終目的とする。本年度は以下の研究成果を得た。(1) 昨年度、リバースジェネティクス技術でレスキューに成功したレオウイルス膜融合p10タンパク質を発現する組み換えインフルエンザウイルスのワクチンウイルスとしての可能性を検証するために、マウスに接種することで抗体応答が増強するかどうかを評価した。対照として野生型ウイルスの抗体応答と比較したものの、有意な差はみられなかった。したがって、p10発現組み換えウイルスをベースとし1回感染型非増殖性ウイルスの構築は行わなかった。(2) 腫瘍溶解性アデノウイルスの犬体内での増殖がブロックされる要因として、ほとんどの家庭犬が接種している犬アデノウイルスワクチンに起因する特異抗体の存在がある。最近、当研究室でわが国の野生のコウモリから分離したコウモリアデノウイルスの遺伝子配列が犬アデノウイルスの遺伝子配列と最も相同性が高いことに注目し、その腫瘍溶解性ウイルスへの応用を考えた。まず、犬アデノウイルスに対する抗血清を用いて、コウモリアデノウイルスが中和されるかどうかを調べたところ、まったく中和されなかった。次に、コウモリアデノウイルスが犬の細胞で増殖するかどうかを検証したところ、培養細胞においては犬アデノウイルスに匹敵する増殖性が示された。
3: やや遅れている
計画通りに進展しない課題が見つかり、その判断に至るまでの検証実験に時間を要した。
引き続き、インフルエンザワクチンに応用できるような1回感染型非増殖性ウイルスの構築を継続する。本年度は、鳥インフルエンザワクチンの実用化を考える際には重要である感染個体とワクチン接種個体を区別できるDIVA戦略についても検討を加える。さらに、世界中に広がりつつある犬インフルエンザについてもそのワクチンについての基礎研究を開始する。一方、腫瘍溶解性アデノウイルスについては、コウモリアデノウイルスをベースとした構築について検討を加える。その全長ゲノムの塩基配列を決定しクローニングし、E1A/B欠損や主要特異的プロモーターの挿入などによる組み換えウイルスの作製を試みる。
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