研究課題/領域番号 |
26252051
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
今内 覚 北海道大学, 獣医学研究科, 准教授 (40396304)
|
研究分担者 |
村田 史郎 北海道大学, 獣医学研究科, 助教 (10579163)
大橋 和彦 北海道大学, 獣医学研究科, 教授 (90250498)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 牛白血病 / 牛白血病ウイルス / 伝播リスク / ウイルス定量 / 清浄化モデル / プロウイルス / リンパ球数 / 免疫抑制 |
研究実績の概要 |
1. 平成28年度は、84件3, 545頭の牛白血病ウイルス感染(BLV)診断を行い、新規導入牛の決定、着地検査、感染牛の分離飼育、優先淘汰および感染牛産子の早期感染診断などに活用した。モデル牧場のうち、陰性牛の陽転が高率で認められたA牧場について原因調査を行った。その結果、人為的感染が原因であることが明らかとなり今後の予防対策の徹底を図った。さらに同農場の陽性牛224頭のウイルス量の定量解析を行った結果、垂直感染ならびに水平感染リスクが極めて高いハイリスク牛が、80頭(35.7%)、準ハイリスク牛が55頭(24.6%)であり、高い陽転率はハイリスク牛からの感染であることが示唆された。現在、非感染牛との分離飼育を行う一方、ウイルス量別に感染牛の生産性への影響の評価(乳量、疾病罹患率など)や陽性牛からの産子への垂直感染診断を実施している(継続中)。一方で、飼育形態が類似するハイリスク牛がいないB牧場1,307頭の陽転率を評価した結果、年間陽転発生率は2.5%(育成期で3.3頭/100頭/年、成牛で1.2頭/100頭/年)と極めて低く、ハイリスク牛のコントロールの重要さが改めて確認された。 2. 近年、若齢での牛白血病の発生が増加していることから、若齢型白血病がBLVに起因するものか、今年度も解析を行った。検体のゲノムDNAを用いて、プロウイルス量の定量、B細胞のクローナリティの評価を行った。腫瘍牛50頭、176検体を解析た結果、ウシのB細胞腫瘍にはClassic EBL (cEBL)、Polyclonal EBL (pEBL)、B-cell-type SBL (B-SBL) の3つの種類があることが明らかとなった(継続解析中)。 3. Direct PCR法を用いた全血からの牛白血病ウイルス迅速簡易診断法を樹立し、大量検体におけるスクリーニングに有効であることを報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も引き続きモデル農場で牛白血病ウイルス感染診断を実施した。さらに陽性牛と陰性牛の分離飼育や各種対策を行い、陰性牛の陽転率をモニターすることでウイルス伝播のリスク解析も行った。モデル農場ではパスチャライザーによる哺乳殺菌の伝播阻止の有効性は再現性が得られた。ハイリスク牛が存在しないモデル農場では陽転率が極めて低かった一方、ウイルス量が多いハイリスク牛が存在するモデル農場では、陽転率が極めて高かった。これまでの実証試験よりハイリスク牛は垂直感染率が高い。また夏に陽転例が多く、冬は少なかったことから昆虫類によるハイリスク牛からの水平感染が示唆されており、防虫対策も改めて重要であることが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
H28年度の調査によって、ウイルス量が多いハイリスク牛は、発症リスクが高いことに加え、水平感染リスクの上昇、産子の胎盤感染および産道感染による垂直感染が多いこと、生産性が低下し傷病率や他の疾病による死亡廃用率が極めて高いことを改めて確認した。昨年度得られた日和見感染症への感受性の増加も考慮し、今後もリンパ球やウイルス量を基準とした総合的な判断による清浄化対策を行っていきたい。
|