研究実績の概要 |
まず、カイコ分散型動原体染色体の構造が、どのような分子基盤によって支持されているのかを明らかにする目的で、カイコ動原体タンパク質の同定を行った。動原体を構成するタンパク質は、生物種間での保存性が極めて低く通常のデータベース検索では同定できない遺伝子もあったが、いくつかの検索アルゴリズム (Blast, HMMER) を用いて候補遺伝子を推定し、カイコ培養細胞BmN4-SID1を用いたRNAi法により、これらが動原体形成に関わる遺伝子か否かを検証した結果、これまでに同定していたCenp-N, L, M, I, K, , Mis12に加え、新たに6個の動原体タンパク質 (Spc24, Spc25, Nnf1, Nuf2, Ndc80, Dsn1)を同定した。これら遺伝子をノックダウンすると、分裂中期において染色体の赤道面上への整列に異常がみられ、その後、多くの細胞において核相の倍数化が観察された。 また、カイコ人工染色体の構築に向けて、カイコ複製関連遺伝子38遺伝子について遺伝子機能阻害解析を行った。その中から、特に重篤な複製阻害を示す6タンパク質について新規複製誘導能の解析を進めている。また、人工染色体のベースとなるバキュロウイルスについて、144全遺伝子のプロモーターを単離し、活性を解析した。これらは、人工染色体構築に必要な基本情報となるとともに、ウイルス性の因子が不在の場合にも強い活性を示すプロモーターは、人工染色体からの遺伝子発現制御に非常に有用であると期待される。
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