研究実績の概要 |
まず、プロテオミクスの手法を用いた新規キネトコアタンパク質の同定については、既知のカイコ動原体タンパク質複合体を発現する培養細胞を構築した。また、不活性型Cas9 (dCas9) を用いることにより、キネトコアタンパク質をカイコゲノムの任意の位置に局在させる系を作製した。これまで、インナーキネトコアタンパク質として5つ (BmCenp-N, L, I, M, K) 同定しているが、Cenp-Iをノックダウンした時のみ細胞周期が前中期に停止しており紡錘糸チェックポイントとの関連性が予想されたため、紡錘糸チェックポイント因子であるMad1, Mad2, Bub1 (BubR1), Bub3をクローニングし、Cenp-Iとの多重RNAiを行った。その結果、Mad1と同時にノックダウンすると前中期に停止する細胞が減少し一過性ではあるが細胞が増殖したため、Cenp-IとMad1の間には遺伝的相互作用はみられた。しかしながら、Cenp-IとMad1には物理的な相互作用はみられなかった。ヒストン脱アセチル化酵素については、HDAC3とHDAC6をノックダウンすると染色体凝集に異常のある細胞がみられた。 また、染色体複製の制御については、カイコ複製関連遺伝子40種の機能阻害実験を行い、各因子の細胞周期に与える解析を終了した。特に、各種DNAポリメラーゼとクランプローダーについては詳細な解析を行い、いずれも遺伝子欠損は致死効果をもたらすものの、その影響には経時的な相違があることを見出した。 ヒストンアセチル化修飾については、HADCに加え、6種のHAT遺伝子をカイコより同定し、予備的な機能阻害実験を行った。また、これまで解析を行ってきたHADCとは異なるファミリーに属するSirtuin遺伝子についても5遺伝子を同定した。
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