本年度は、動原体形成に関わる新規遺伝子No37に着目して研究を進めた。No37をRNAiによりノックダウンすると、動原体形成に異常がみられ、細胞の赤道面において染色体の整列異常が観察された。そこで、既知の動原体タンパク質との相互作用を調べた結果、Spc24/Spc25、Mis12/Nnf1/Dsn1、Cenp-Nと結合していた。 遺伝子ネットワークから推定された染色体制御因子と関連のある機能未知遺伝子については、2つの遺伝子につて解析を行った。どちらもRNAiによりノックダウンを行うと、染色体の分離に異常が見られた。No21は、分裂期中期に動原体とその周辺の紡錘体、後期以降はミッドボディに局在していた。No99は、分裂期中期に染色体近傍の紡錘体に局在しており、相互作用するタンパク質を解析した結果、紡錘体内部における微小管形成に関わるタンパク質複合体であるオーグミンと相互作用していた。さらに、CRISPRシステム (不活性型Cas9) を用い、任意のタンパク質(動原体タンパク質を含む)を染色体に異所局在化できるシステムを構築した。標的配列には、カイコゲノムに複数存在するトランスポゾンを選び、その中から効率よく働くgRNAを同定した。 染色体複製の制御については、プラスミドを培養細胞内で効率よく複製させるのに必要な遺伝子の探索を引き続き行い、Orc1を同定した。また、複製起点認識複合体 (ORC) のうち、Orc2とOrc3、Orc3とOrc5が相互作用していた。 ヒストン関連因子の解析では、HDAC(4遺伝子)、HAT(4遺伝子)のノックダウン細胞のトランスクリプトーム解析の結果を行い、転写量が変化した遺伝子を同定した。その中でも、HDAC8をノックダウンすると743遺伝子の転写量が有意に変化しており、その中には、TCAサイクルや脂肪酸代謝に関わる遺伝子が多く含まれていた。
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