研究課題
プロリン異性化酵素Pin1の機能の検討に我々はタンパク質の構造変化をリアルタイムで観察できるFRETの作成を検討してきた。c-mycペプチド(Pin1の結合部位であるSer58,62を含む)を基質としてPin1による構造変化を観察できるようになった。Pin1自身も構造変化を起こすのでその測定も可能にした。1,2年でPin1による構造変化の機構を解明できると思う。この研究の過程でNOセンサーの作成を試みた。生体内ではNOそのものはすぐに硝酸に酸化されるので、大豆根粒菌の硝酸センサーシステム(NasS/T)を利用し、細胞内で硝酸濃度をFRETとして観察できる方法を構築した。この方法をsNOOOpy法と命名し論文発表した(J BIol Chem 2016)。Journal of Biological Chemistry誌のpaper of the weekに選ばれ、プレスレリースもされ、国内外で話題になった。この他、抗癌剤などに対する耐性や脳血管バリアに関与しているMDR(p-glycoprotein)遺伝子の発現制御を転写因子であるFOXO3が行っていること、また、Pin1がリン酸化されたFOXO3の分解を促進することでMDR1の発現を抑制していることを解明した(Biochem Biophy Res Commun 2016)。このほかPin1がAMP-activated protein kinase (AMPK) のリン酸化されたガンマサブユニットに結合しキナーゼ活性を抑制することで糖尿病を発症または悪化させることを明らかにしPin1が糖尿病の薬剤標的になりうる根拠をこれまでの一連の研究に加える形で示した(J BIol Chem 2015)。
1: 当初の計画以上に進展している
プロリン異性化酵素Pin1の機能の検討に我々はタンパク質の構造変化をリアルタイムで観察できるFRETの作成を検討してきた。この研究の過程でNOセンサーの作成を試み、大豆根粒菌の硝酸センサーシステム(NasS/T)を利用し、細胞内で硝酸濃度をFRETとして観察できる方法、sNOOOpy法を構築した。本研究は、Journal of Biological Chemistry誌のpaper of the weekに選ばれ、プレスレリースもされ、国内外で話題になった。これは世界で初めてのリアルタイム細胞内硝酸濃度を測定できるセンサーである。また、抗癌剤などに対する耐性や脳血管バリアに関与しているMDR(p-glycoprotein)遺伝子の発現制御を転写因子であるFOXO3にPin1が作用し制御していることを解明した(Biochem Biophy Res Commun 2016)。Pin1がFOXO3に作用していることは初めての発見であり、癌の治療の際に有用な指標を提供した。さらに、Pin1がAMP-activated protein kinase (AMPK) の活性を抑制することで糖尿病を発症または悪化させることを明らかにしPin1が糖尿病の薬剤標的になりうることを明確にし糖尿病の治療に役立つ発見をした。
広範囲な研究課題であるので、Pin1の生理機能として癌、代謝疾患、循環器疾患などに役立つ成果をあげることができた。これから広範囲な研究を促進し、国民の健康長寿に役立つような研究を推進する。健康に役立つ食品の研究も代謝疾患の克服を目指して行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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http://www.agri.tohoku.ac.jp/enzyme/index-j.html