研究課題
ダイズ根粒菌のRj2-ダイズ共生不和合性の分子機構:分泌タンパク質のプロテオーム解析に基づき、エフェクター候補遺伝子Bj122_1969が見いだされたが、単独でRj2不和合性を誘導するエフェクターではなかった。そこで、不和合性株/和合性株グループのゲノム比較およびRj2ダイズ共生表現型に基づいて見いだされた約17個のエフェクター候補遺伝子について酵母two hybrid解析用のベクターにクローニングし、ダイズのRj2原因遺伝子(Glyma16g33780)との相互作用解析系を確立した。ダイズ根粒菌nasSTによる脱窒遺伝子発現制御の遺伝学的解析:異化的硝酸還元の最初の過程である硝酸還元(nap)と最後のN2O還元(nos)を担う遺伝子発現のみNasTにより正に制御されていた。NasTは硝酸無添加の好気条件でもnapとnos遺伝子の発現誘導と活性上昇をもたらし、酸素センサーFixLJの下流のfixK2遺伝子の発現が顕著に発現上昇した。しかし、硝酸存在下の嫌気的条件では、NasTによるfixK2遺伝子の上昇は全く認められなかった。したがって、これらの条件ではNasTによる異なった制御システムの存在が示唆された。一般にNasTによる硝酸同化系遺伝子の発現制御は、Antitermination機構によるが、nap/nos/fixK2遺伝子上流にはNasTが結合できるヘアピン構造は見いだされなかった。そこで、NasTタンパク質とRNA断片の相互作用を検出できるゲルシフトアッセイの実験系を確立した。ダイズ根粒菌の脱窒制御蛋白質NasS、NasTの構造機能解析:大腸菌で野生型、変異型のNasSと NasTタンパク質を作成し、これらが分子複合体を形成すること、また、硝酸/亜硝酸添加によりこの複合体が2分子に分離することを明らかにした。次に、野生型、変異型のCFP-nasT、nasS-Venus(YFP)を作成した。これらの複合体は二分子FRETとして検出可能であり、またuMオーダーのNO3-/NO2-の濃度変化をFRETの変化からとらえることができた。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、 (1) 植物共生細菌がどのように病原システムを取り入れて共進化してきたのか、(2)温室効果ガス除去に重要な根粒菌N2O還元酵素遺伝子の転写促進を促す二成分制御系NasSTの制御機構を明らかすることを目的とした。ダイズ根粒菌のRj2-ダイズ共生不和合性の分子機構については、不和合性株/和合性株グループのゲノム比較およびRj2ダイズ共生表現型のデータ解析を進め候補遺伝子が挙げられ、酵母two hybrid法によるダイズのRj2原因遺伝子との相互作用の解析をできる実験系を確立した。本年度に計画している不和合性株全ゲノム塩基配列決定で、Rj2原因エフェクターの実態に確実に近づくと考えられる。ダイズ根粒菌nasSTの解析では、NasTがどのようにnapとnos遺伝子を制御しているかを明らかにすることが最終目標である。脱窒系遺伝子は一般に低酸素分圧と硝酸などの窒素酸化物により強い誘導がかかる。昨年度は、硝酸無添加の好気条件と硝酸存在下の嫌気的条件ではFixK2を経由したNasTによる複雑な制御システムの存在が示唆された。NasTタンパク質とRNAのゲルシフトアッセイ系が確立したことは、今後NasTがどのようにnapとnos遺伝子を制御しているか、分子レベルでの相互作用を見る上で大きな前進である。さらに、大腸菌で野生型、変異型のNasSと NasTタンパク質を作成し、これらが分子複合体を形成すること、また、硝酸/亜硝酸添加によりこの複合体が2分子に分離することを明らかにした。次に、野生型、変異型のCFP-nasT、nasS-Venus(YFP)を作成した。これらの複合体は二分子FRETとして検出可能であり、またuMオーダーのNO3-/NO2-の濃度変化をFRETの変化からとらえることができた。このセンサーをsNOOOpy systemと命名した。これらの成果とその背景の論文を公表した。
ダイズ根粒菌のRj2-ダイズ共生不和合性の分子機構:本年度の結果を踏まえて、Rj2不和合性を誘導する根粒菌エフェクターの同定のために、昨年度確立した酵母two hybrid法によるダイズのRj2原因遺伝子との相互作用の解析を行う。さらに、USDA122株の完全長ゲノムを決めて解析の精度を上げ、複数のエフェクターが関与する場合にも対応できる戦略も加える。さらに、不和合性と和合性のダイズ根粒菌の分泌タンパク質の相違をプロテオーム解析で明らかにし、Rj2不和合性誘導の原因エフェクターの同定を目指したい。ダイズ根粒菌nasSTによる発現制御については、RNA seqの結果を待って、NasTの制御ネットワークと制御モチーフを明らかにする。また、NasTとRNA結合部位を実験的に同定できるゲルシフトアッセイ系が確立したので、nap/nos/fixK2遺伝子等の上流のRNA断片とのゲルシフトアッセイを実施する。また、嫌気条件で5%-20%のN2Oガスを投与するとnap遺伝子の発現が有意に上昇した。これはN2Oセンサーやシグナル伝達系の存在を示唆しているので、余裕がある場合はN2Oの有無によるRNA seq解析を行う。sNOOOpy (sensor for physiological NO3-/NO2-) system (NO3-/NO2-の濃度変化をFRETの変化からとらえるセンサー)を動物細胞で応用することを検討する。また、NasSとNasTおよびNasS/NasT複合体の結晶化、NO3-/NO2-添加時のNasTの結合状態の結晶化解析を行う
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