研究課題/領域番号 |
26252065
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
南澤 究 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70167667)
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研究分担者 |
佐藤 修正 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (70370921)
内田 隆史 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80312239)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生物間相互作用 / 共生 / タンパク質分泌系 / 脱窒 |
研究実績の概要 |
ダイズ根粒菌のRj2-ダイズ共生不和合性の分子機構: 作年度ノミネートした17のエフェクター候補遺伝子について酵母two hybrid解析用のベクターにクローニングし、ダイズRj2遺伝子との相互作用を解析した。その結果、Bj122_1969と二つのnop遺伝子の産物がRj2遺伝子第2エクソン部分の産物と相互作用することが明らかとなった。USDA122株の全ゲノム塩基配列(9.14 Mb)を決定し、共生不和合性を起こさない変異体を取得し、ゲノム比較によりT3SS構造体とエフェクター遺伝子に欠失および挿入配列の挿入による変化が観察された。 ダイズ根粒菌nasSTによる脱窒遺伝子発現制御の解析:RNAseqおよびレポーター遺伝子解析により、異化的硝酸還元の最初の過程である硝酸還元(nap)と最後のN2O還元酵素(nos)遺伝子発現のみNasTにより正に制御されていた。一般にNasTによる硝酸同化系遺伝子の発現制御は、Antitermination機構によるので、NasTタンパク質とこれらの遺伝子上流のRNA断片の相互作用を検出できるゲルシフトアッセイ実験を行った。その結果、napE, nosZ遺伝子上流のRNA断片にはNasTが結合しなかったが、N2O還元酵素遺伝子群の制御遺伝子nosR遺伝子上流のRNA断片にはNasTが結合した。また、nosR遺伝子上流のRNA断片上に熱力学的に安定な複数のヘアピン構造を見いだした。 NasS、NasTの構造機能解析: CFP-nasT、nasS-Venus(YFP)を用いて、sNOOOpy (sensor for physiological NO3-/NO2-) systemを動物細胞内の硝酸濃度変化をリアルタイムでモニターできることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、 (1) 植物共生細菌がどのように病原システムを取り入れて共進化してきたのか、(2)温室効果ガス除去に重要な根粒菌N2O還元酵素遺伝子の転写促進を促す二成分制御系NasSTの制御機構を明らかすることを目的とした。 ダイズ根粒菌のRj2-ダイズ共生不和合性の分子機構については、共生不和合性の宿主ダイズのR遺伝子産物と相互作用する複数の根粒菌エフェクターを酵母two hybrid解析により見いだすことがでた。さらに、USDA122株の全ゲノム塩基配列(9.14 Mb)解析等に基づいて、原因エフェクターと想定される遺伝子候補が得られた。したがって、これらの解析をさらに加速することにより、Rj2原因エフェクターとその共生不和合性機構の解明が進むと考えられる。 ダイズ根粒菌nasSTの解析では、NasTがどのようにnapとnos遺伝子を制御しているかを明らかにすることが最終目標である。本年度は、網羅的な発現解析からもその事実を明らかにしたとともに、NasTタンパク質がN2O還元の制御遺伝子nosR遺伝子上流のRNA断片に結合したことは、この領域のどこかに、Antitermination機構による制御が起っていることを強く示唆しており、大きな前進であった。さらに、ダイズ根粒菌NasSTを利用して真核細胞内のNO3-/NO2-の濃度変化をリアルタイムでとらえることができたsNOOOpy systemについて論文発表を行ったところ大きな反響があり、米国生化学会のJBCという雑誌の表紙や優秀論文に選ばれ、東北大学からプレスリリースも行った。
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今後の研究の推進方策 |
ダイズ根粒菌のRj2-ダイズ共生不和合性の分子機構に関する本年度の結果から、ダイズのRj2原因遺伝子(Glyma16g33780)との相互作用に関与するエフェクターが、T3SS依存的に分泌されているか否か、ダイズ根粒菌USDA122野生型およびT3SS構造体の遺伝子破壊株rhcJ変異体を用いて検討する。酵母two hybrid解析系をさらに洗練化し、候補となっている複数のエフェクター候補遺伝子とダイズRj2遺伝子の全長のcDNAを用いて、タンパク質間の相互作用を徹底的に解析する。このような解析を通じて、Rj2不和合性誘導エフェクターの同定と不和合性機構の全容の解明を目指し、共生細菌である根粒菌が病原システムであるとされるエフェクター誘導性免疫系をどのように利用しているか明らかにしたい。 ダイズ根粒菌nasSTによる発現制御については、N2O還元の制御遺伝子nosR遺伝子上流のRNA断片にはNasTが結合したという昨年度の結果を基盤に、nosR遺伝子上流のNasT結合部位と制御様式について、ゲルシフトアッセイなどにより集中して解析を行う。具体的には、nosR遺伝子上流のRNA断片上にプリンリッチリンカーを介して二つのヘアピン構造HP1, HP2を見いだしている。そこで、HP1がNasT結合性AntiterminatorでHP2が転写終結用のTerminatorであるとい作業仮説の下で実験を進める予定である。HP1- HP2領域を削除により理論的にはnos遺伝子群が恒常的に高発現する可能性もあり、高いN2O還元酵素活性をもつ根粒菌として応用的にも重要かもしれない。また、NasSとNasTおよびNasS/NasT複合体の結晶化解析を行う。
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