研究実績の概要 |
ダイズ根粒菌のRj2-ダイズ共生不和合性の分子機構:Rj2ダイズに共生不和合性を誘導するUSDA122株のエフェクター遺伝子 nop BD122_09010を遺伝子破壊で同定した。共生和合性を示すUSDA110株にも当該遺伝子があり、BD122_09010とは4アミノ酸残基の置換が存在した。USDA122株とUSDA110株の当該nop遺伝子のスワッピング実験により、USDA122型のnop遺伝子の産物が共生不和合性を起こすことが証明され、当初目標を達成した。また、rj2ダイズにRj2遺伝子を形質転換したダイズを材料として、nop遺伝子の産物が、Rj2原因遺伝子Glyma16g33780の産物(R)を介して共生不和合性が起こることを証明した。さらなる分子機構の解明が、当該nop遺伝子産物と宿主Rタンパク質による根粒菌のせめぎ合い型の共進化について重要な科学的根拠を与えると考えられる。 ダイズ根粒菌nasSTによる脱窒遺伝子発現制御の解析:二成分制御系のNasTタンパク質によるN2O還元酵素遺伝子nosZを含むnosRZDFYLX 遺伝子群のアンチターミネーション制御について検討した。nosR遺伝子上流の5’リーダーRNA配列のヘアピン構造H1, H2を欠失させたところ、硝酸非存在下特異的なnosRZD遺伝子の発現誘導が観察された。ヘアピンH1を欠失されたRNAはNasT結合能を失った。これらの結果は、nos遺伝子群の発現は、H1, H2両方の転写終結により抑制されると考えられた。したがって、nasSTは硝酸同化制御のみでなく、硝酸異化系の制御に関わっており、硝酸センサーNasSとそのレギュレータNasTのアンチターミネーション制御によるnosR遺伝子発現までの制御系の仕組みが明らかとなった。これらの知見はN2O還元酵素活性の高いダイズ根粒菌の作出の基盤となると考えられた。
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