研究課題/領域番号 |
26253001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
徳山 英利 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00282608)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機化学 / 薬学 / 生物活性天然物 / 全合成 / アルカロイド / 酸化反応 / 多環性高次構造 / 構造修飾法 |
研究実績の概要 |
本年度は、合成の格段の効率化の新たな方向性を示す独創的な骨格構築法および酸化反応を基盤とし、特異で複雑な骨格を有する以下のアルカロイドの合成研究を行った。ジチオジケトピペラジン系アルカロイドの合成に関しては、独自に開発したビニロガスRubottom酸化反応を利用し、抗癌剤のリード化合物として期待されるMPC1001Bの世界初の不斉全合成を達成した。また、開発した本酸化反応の一般性を検証し、その有用性を実証した。アザスピロ系アルカロイドの合成に関しては、申請者が見出した不斉転写型ラジカル転位環化反応を駆使し、(-)-ヒストリオニコトキシンの基本骨格であるスピロ構造の立体選択的な構築を完了した。アコニチン系アルカロイドの合成に関しては、ラジカル条件を利用したアミンの酸化を経るMannich型カスケード反応を新たに開発し、アコニチン化合物の主要な4環性骨格の構築に成功した。含窒素多置換複素環構造を有するアルカロイドの合成に関しては、申請者が開発した配位子フリーの銅触媒を用いた分子間アミノ化反応により、インドラクタムVの全合成を完了し、類縁化合物であるテレオシジン合成の足がかりを確立した。スピロアミナール系高次縮環型アルカロイドの合成に関しては、クロム酸化によるアミド隣接位での化学選択的なC-H酸化を起点とした新規アミナール構築法を開発することで、イソシゾガミンの短工程不斉全合成を達成した。また、インドールの酸化と続くシリルイミデートによるラクタム化を経る新たなアミナール構築法を開発することで、ロイコノキシンやその類縁化合物の網羅的全合成を達成した。上述した天然物合成に留まらず、分子状酸素を利用したアミンの酸化を介するアルカロイド化合物の新たな構造修飾法を確立した。本年度に確立した本酸化反応は、今後の生物活性天然物合成への応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していたイソシゾガミン、MPC1001B、ロイコノキシン類やハオウアミンBの全合成を達成しただけではなく、類縁化合物の網羅的全合成を達成した。また、本合成研究を通じて、形式の異なるさまざまなアミンの酸化反応を新たに開発した。なかでも分子状酸素を利用したアミンの酸化を介する構造修飾法は、予想を上回る有効性が確認でき、環境調和性の観点からも高く評価される成果であると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で確立した研究をもとに、抗HIV作用を有するエピコッシンG、(-)-ヒストリオニコトキシン、テレオシジン、プラキニジン、ハプロファイチンの全合成を達成する。さらに、申請者が新たに見出した分子状酸素を利用するインドールの酸化的二量化を駆使し、エピゲノム創薬におけるリード化合物として期待されるメリナシディンIVの世界初の全合成を達成する。さらに、MPC1001Bをはじめとして、合成が完了した生物活性天然物の誘導体合成を順次行い、創薬研究を指向した研究を行うことも視野に入れている。
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